一個前のスピンオフ。
豆が嫌いな郷田さん。




スラムアジトでガサガサと後片付けをしている少女が一人。

「ミカ、後は俺がやっとくから」

「大丈夫、ですよ」

放課後スラムに集まって全員で豆まきをした。
鬼を誰がやるかとかはなく。ひたすらに。

みんなは気がすんで、後片付けを誰がやるかをジャンケンで決めミカが負けた。

「郷田さんは、帰らないの?」

「ミカ一人置いていけないだろ?帰り道歩かせるの怖い。」

ただでさえスラムは絡まれやすい。一人で置いておくにはやはり気が引ける。

郷田はソファーの上でかさりと未開封で余った豆の袋を掴んで見つめた。

「豆は、年の数、食べるんですよ」

「ああ、」

郷田の相づちと共に後片付けが終わり、ゴミ袋をゆるく結ぶ。するとミカは郷田の横にちょこんと座った。

「下さい」

すっとミカが両手を出してくるので袋ごと渡してやる。
ミカは受け取り封を開け一粒取り出して食べた。

「ミカは豆好きなのか?」

「はい。」

「…へぇ」

「…郷田さんは、嫌いなの?」

「いや、嫌いっつか、独特な味がしてな…少し苦手ってくらいだな」

苦手…そんな郷田さんも素敵。そう考えながらミカはふわりと微笑む。
また彼の意外な一面を知った。

しかし…―――


「駄目。」

「あ?」

「好き嫌い、駄目。郷田さん」

「…悪い」

かさりと袋から一粒取ると郷田の唇に押し当てた。

「…。」

きょとんとした顔でミカを見つめ、唇に押し当てられた豆を少し口を開きぱくりと口内に含んだ。
歯を立ててポリポリと食べる。

その様子を観ればミカはまたふわりと微笑んだ。

「年の数、ちゃんと、食べて下さいね?」

「…ミカがそうやって喰わしてくれんだったら喰えるかも」

ニヤリと意地悪く笑ってやればミカの頬がほんのりと赤く染まった。









豆をあーんするとか自分で書いたくせに新しい。

豆が嫌いなのは私です。


2012/02/03

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