「………最悪だ。」
仙道は目の前のチラチラと振る白い雪に眉を寄せながら溜め息を付いた。
こんな事を誰が想像したのだろうか。少なからず昨日は想像していなかった。
「はあ?!」
『だから、明日駄目になった』
「…何で」
『お母さんから映画のチケットもらったの…それが明日までで。ミカと行きたいのよ…と言うか行く。』
「俺で良いだろ?」
『だって、明日観るの恋愛物よ?絶対仙道寝ちゃうもの。この間の事忘れたの?』
喉をう、と詰まらせこの間と言われた事を思い出す。
アミに誘われ行った映画はよくあるお涙頂戴物の恋愛映画。仙道は最初の1時間ほどは見ていたのだが飽きていつの間にか寝ていた。エンドロールでアミに腕をつつかれるまでそれはもうぐっすりと。
「……ったく、分かったよ。ちゃんと埋め合わせはしろよ」
ありがとう、仙道。そう言ってアミはCCMをピッと切った。
何時も通りどちらかの家でだらだらと過ごす事を考えていた仙道は休日が丸々空いてしまった。
まあ、たまには良いのかものね。
そして次の日。
昼前まで寝ていた体を起こし、暇だ…と考え最近ゲームセンターに行ってない事を思い出す。
「久しぶりに行ってみるか…」
身支度をして、ゲームセンターに行ったまでは良い。そこで夜までだらだらと時間を潰す予定だった。
気が付いた時にはゲームセンターの周りは薄く真っ白い雪に覆われていた。
行く時にはまだ晴れていたので、傘なんて言う物は持ってきてはいない。
「…アイツのせいだ…」
全部、全部川村アミの。
舌打ちをして仕方なく帰ろうとした。
「仙道?」
「…川村アミ」
何で。
「何でここにいるんだって言いたそうな顔してる」
「…。 三影ミカはどうした」
「映画観て買い物する予定だったのだけど、雪降ってきたから映画観てわかれてきちゃった」
「俺が寂しい休日を過ごしていて可哀想とでも思ったかい?」
「…そんなの思ってなかったわよ!仙道の家行ったらいなかったから…ここかなぁって」
わざわざ家にまで行ったのか…物好きめ。
「でも来て良かったかしら?」
「何でだい?」
「傘、持ってないでしょ?」
仙道は数回まばたきをしてああ、そうだよ。と半ば開き直るような解答をした。
「だと思った。はい」
片方で傘を持ち片方を背中に隠していたアミはすっと背中から手を出すと黒い傘が出てきた。
「お父さんのだけど。」
「…どうも」
黒い傘を受け取れば仙道はその場でパンッと開いた。
「今度会う時に返してくれれば良いから」
「…いや、あー…川村アミ」
「?」
「傘、すぐ返すから家来いよ。」
じゃあ、と帰ろうとしたアミを呼び止めるとアミはええ、と微笑んだ。
関東も無事今季雪デビューしたので。
2012/01/30
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