ピンポーンと家のインターホンが軽快に鳴る、よろよろとベッドから起き上がり玄関まで歩いてドアを開けた。

「は…い、」

ぼうっとした目で相手を見れば、鼻を赤く染めた少女がびっくりした表情でこちらを見た。

「川村…アミ?」

なんで…。

「仙道が…電話くれたんでしょ…?」

電話?
頭が働かない。電話した記憶がすっぽり抜けている。

「…悪かったな…まぁ上がれ…」

「だ、大丈夫なの?」

「…大丈夫そうに見えるか?」

見える訳ないじゃない。とアミは仙道の肩を支えて部屋のベッドに寝かせた。

「さっきはびっくりしたんだから。仙道が今にも死にそうな声で電話してくるから…」

「……わりい…」

「両親は?」

「面倒だから言わないよ」

「まぁ、仙道の性格じゃそうよね。…熱はどれくらいあるの?」

「んなの計ってない」

はっ?!とアミは大きな声を上げ無理矢理体温計の場所を聞いて取りに行けば、仙道に計りなさいと手渡す。

「そうだ、キッチン貸して」

「ん、いーけど…何するんだ…?」

「リンゴ買ったから切ってあげる」

アミはすくりと立ってキッチンに向かった。
世話焼き。
お節介。
色々言ってやりたかったが、口があまり発する事を許してくれない。

誰にも頼らないと決めてたはずだったのに…――
寝てれば治ると思ったのに…―――



少したった時に、アミはひとつの皿と氷枕を持ってきた。

「仙道、頭上げて」

「んー無理…」

もう…アミは溜め息を付いて片手で仙道の頭を持ち上げて枕をどかし氷枕を入れた。頭を預けるとヒヤリとして心地よい。

「何度あった?」

「え?」

忘れていた。仙道は脇から体温計を取って見れば、自分の体温ではありえない数字に目を見張った。

アミは手を出し体温計を仙道から奪い見ると驚く。

「八度五分?!」

「…合ってるよ」

「よく歩けたわね?!」

信じられない、と呆れた顔をされた。
知るか。俺だってこんなにあるとは思わなかったよ。

「仙道、口あけて」

「……………は?」

目の前に出されたスプーン。
多分リンゴをすりおろしたモノ…だと思う。
俺に喰わせたいのか?

「…っ」

熱だけじゃなく顔が火照る。
仕方なく、少し顔を上げてスプーンを口に含んだ。
普段の自分なら屈辱意外の何者でもないけど、頭がぐらぐらして働かないので、アミが出すスプーンに素直に口を開いた。


―――可愛い…。


あの、仙道が素直に食べている。
こっちが逆に照れてしまう。
ふわりと微笑むとそれに気が付いた仙道が必死に眉を寄せ睨む。顔が赤くて何時もの迫力は無かった。

「…何」

「ふふ、美味しい?」

「まあまあ」

喉に通る感覚が気持ち良い。
冷たくて美味しい。

食べ終わって、頭を氷枕に付けてぼうっと天井を見ていたら、ひたりと額に冷たい感触が現れる。
目線を移せば心配そうにアミの手が仙道の額を撫でていた。

「欲しいものある?」

「このまま…」

「ん?」

「このままで、いい…」

瞼をおろすとそのまま仙道は意識を手放した。








「…」

目を開けると少し生ぬるく氷が溶けた枕と手を握られてる感触。
横をみればすうすうと寝息を立てている少女が目に映る。額に置かれていた手はいつの間にか仙道の手を握りしめていた、時計を見ると短針が六時を指している。二時間程寝ていたようだ。

「おい、川村アミ…」

肩に手を置きゆするとアミはゆっくりと目を開けた。

「仙道…?…?!」

今の状態に気が付き、急いで顔を上げる。仙道の額に手を乗せると先ほどより熱くなく、ほっと息を吐く。

「平気?」

「さっきよりは全然」

「…良かった」

「帰ってくれても良かったのに」

「病人置き去りで帰れないわよ、それに風邪の時家に一人とか寂しいと思わない?」

「…別に」

少し元気になればすぐこれだ。
素直じゃないなあ…とアミが微笑む。

体温を計ると七度五分。
平熱と比べればまだ全然高いが、先ほどよりは格段に熱は下がっている。

「ありがとな…」

仙道がそう口を開けば、アミは瞬いて仙道、まだ熱に浮かされてる?と真顔で聞いてきたので、ベッドに置かれたアミの手を少しつねってやった。

「だって、仙道がお礼を言うなんて…意外」

「悪かったな、意外で」

冗談よ、冗談と言ってアミは鞄からCCM取り出して見れば顔からざっと血の気が引いていく。

「…どうした?」

「お母さんから…早く帰りなさい、だって」

「あー六時半だもんな…早く帰れよ。送ってけねえし」

ええ、と言って帰り支度を始める。

「鍵は閉めれる?」

「だから、さっきよりは元気だよ」

私が帰ったら閉める事、と言われた。お前は俺の親か。

アミは皿等を片付けて支度をすると玄関に向かった。仙道ものろのろと着いて行く。

「熱が下がったって、明日も大事をとって学校は休んでね」

「はいはいお節介お節介」

「純粋に心配をしてるのだけど」

アミは仙道の手を取り軽く握ると何時もと暖かさが逆の手にキスをした。

「…お?!」

「じゃあ仙道、お大事にね」

そう言うとアミは扉を開け帰っていった。
明らか風邪とは違う熱が顔を赤く染める。

…くそ…熱下がったら覚えてろ…。









風邪引くと誰でも弱くなるよねとか考えた話。

もうちょっと書きたかった内容があったけど、書けなかった…完全なる消化不良。ごめんなさい。


2012/01/13

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