ゲームセンターのDキューブでバンやカズがバトルしているのを見ながら奥でアミはお腹を抱えていた。
「お腹…痛い…」
声に出した所でDキューブからは離れているし、人が多いからバン達は気が付かない。
遠くの方で扉が開くのに気が付けば、ここを縄張りにしている紫色の髪の男が入ってきた。
バン達を発見すると、キョロキョロとゲームセンター内を見渡して獲物を見つけたとばかりに目が揺れる、足を進めゲームセンター奥に座りこんでいるアミの隣に腰を下ろした。
「仙道…」
「嫌そうな顔してんなよ」
「嫌だもの」
「可愛くないねえ…お前はアイツらに混じんないのか?」
ちらりとアミを見るとアミがお腹をさするのが目に映る。
「どうした?痛いのか?」
「別にあんたには関係ないわよ」
「あの日か?」
「…っ変態」
仙道はせっかく聞いてやれば、と文句を言うがアミには届いていない。アミはお腹をさすり息を吸い込んで痛みに絶えている。
「薬は?」
「持ってるわけないでしょ…て、ちょっと?!」
仙道の腕が伸びた先はアミのお腹、仙道の手がゆっくりアミのお腹の上を滑る。
「あ、やだ…っ」
外から入ってきたばかりの仙道の手はまだ少し冷たくて、アミの体は冷たい体温でびくりと震えた。
「どの辺りが痛いんだい?」
「え?…っんと…」
「…まあこの辺りさすっとけば良いか」
お腹全体をゆっくりとさすりながら女って大変なんだな、と呟く。
自分の手とは違い大きい手が自分のお腹を撫でるのがとてもじゃないが恥ずかしい。
「仙道…止めてよ」
「なんで?」
「こんな、見られる…」
「山野バンと青島カズヤに?」
ニヤリと笑いかけるとアミは顔が赤くなる。分かっててやっているのだ仙道は。
「分かってるならやめてよ」
「嫌だね」
アミはそろりとDキューブに目をやると、まだ勝負が着かなくてバンとカズは必死にCCMのキーボタンを押している。
良かった気づいてない。
ふう、と息をはく隣でまだ仙道はアミのお腹をさすっていた。
先程より腹部が暖かくなっていて、痛みが引いているのが悔しくてたまらない。
「川村アミ」
「な、によ…」
「すっげーくるな、その顔」
「はぁ?!」
少しだけ赤く珍しく眉を八の字に下ろされた顔は、仙道の一言で赤さを増す。
Dキューブの方で音が鳴ると仙道は手をアミのお腹から離して立ち上がる。
「くっそーっバン!もう一度!」
「ああ!…って仙道?」
バンの声に反応し、カズが横を向けば、Dキューブの中を見ている仙道が映る。
「仙道もやるか?アミもいれて2対2!」
「ん?いや、帰る」
「え、来たばっかりじゃないの?」
呆れた。
仙道は溜め息をつく。自分が入って来た事も気が付かれなかったのか。
「なあ、その川村アミだけど、腹痛いらしいから早く帰してやんなよ」
人差し指を立てアミを指差せばバンとカズはアミを見やる。
するとお腹に手をやり痛そうに背中を丸めてる。
「「アミ?!」」
綺麗に二人の声がそろうと仙道は喉を鳴らし、じゃーなと言ってゲームセンターから出て行った。
二人がアミに駆け寄れば、何で言ってくれないんだよ!だのと怒られて。アミは二人が早く行こうって言ってて言えなかったのよ、とチクリと返せば二人はすみませんと謝った。
アミの周り男の子ばっかだから体調が悪いのとか黙ってそう。
2012/01/18
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