言われた言葉に驚いて目を白黒させていると、サイレンの音が聞こえて来た。
返事をしなきゃと思うのに、口がくっついたように動かなくて何も返事をすることができない。
それを否定と取ったのか肯定と取ったのか、キッドはもう一度唇を盗んだ。
甘い甘いキス。
今度は少しだけ深く、熱くて目眩を覚えた。
ゆっくりと唇が離される。
「それではさようなら」
「…………ま、待って…キ…」
必死に呼び止める言葉も無視して去っていった。
新一の想いも聞かずに。
「俺は…」
キッドが消えた場所を見つめる。
言いたかったのに言えなかった。
本当は俺もあいつのこと…。
「俺も……」
――――――――好きなのに…
そう思った瞬間、新一はまた真っ赤になった。
どうすればいいかわからない。
ただ、キッドの切ないくらい綺麗な紫が目に焼き付いて離れない。
「…………俺にも、返事くらいさせろよ…」
ぽつりと呟いて青い青い空を見上げた。
白い鳥が羽ばたいて消えていく。
今度会ったら今度こそ言おう。
――――お前のことが好きだって
少し離れた場所。
そこでキッドは新一を見つめていた。
本当は伝えるつもりなんてなかった。
ましてあんなことをするなんて…。
そっと触れ合ったところを指で辿る。
「もう、会うことはないだろうけど…」
違う。
会えないんじゃない。
会わないんだってこと。
でも、いつかまた彼に会うような気がするんだ。
ダメだってわかってるのに。
「さよなら、新一」
風に流されて、声は消えた。
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