「大丈夫ですか?」


そっと外された戒めに、新一は身体を起こそうとした。
だが、目眩がしてふらついた。
そっと白い手が伸ばされて頬へ、瞼へと這う。


「ああ…。サンキュー、キッド」


それに安堵の笑みを浮かべて新一は瞳を閉じた。
横でウィリアムソンがぺたりと床に座り込んだ。



++++++++++



少し前。
キッドはFBI支部の近くのマンションの一室にいた。
密かに惹かれる彼の動向を探るために。
案の定彼は支部から出て来て歩き出した。
どうやら気づいてしまったらしい。


「まったく…」


キッドはため息を吐いて彼の後を追った。




やっぱりと言うかなんと言うか。
あろうことか新一は犯人の家を訪ねてしまった。
それを見てため息を吐くキッド。


「あんなに忠告したのに……」


キッドは殴り倒されて連れて行かれる新一を辛抱強く見送ってから行動を再開した。
家の中にこっそり侵入して仕掛けを施す。
これで後は警察が見つけてくれるだろう。
後は警察の仕事だ。



++++++++++



「まったくあなたという方は。無茶をするんですから…」

「わ、悪かったよ」


ウィリアムソンを捕らえて手錠で拘束してから、新一は仲間がくるまでの間キッドと話し込んでいた。
忠告をしたのにとため息を吐かれてシュンとする。
久しぶりに会えて嬉しかったのはふたりとも同じだ。
でも、時間がそれを許さない。
キッドは新一へと伸ばした指をそっと引っ込めた――。


「何で手、引っ込めるんだよ!!」


キッドが引っ込めようとした手を掴んでグイッと引っ張る。
顔が自然に近づいて、新一がそれに真っ赤になった。
肉迫した中では顔は丸見えだ。
新一はわかっているのだろうか?
今までこんなに近くでキッドの顔を見た者はいないということに…。


「あなたは、本当に不思議な方ですね」

「……ぇ…」


キッドが新一の顔を覗き込んだ。
顔と顔が触れそうな位置まで近づいて来て新一は訳もなく慌てた。
いや、訳ならあったが。


「いつか本当に…消えてしまいそうだ…」

「キ、ッド…」


真剣な紫の視線に絡め捕られる。
吸い寄せられるように、目が離せなかった。


「あなたがいなくなってしまうかと思った」


ギュッと腕に抱き込んでキッドが顔を覗くと、新一はきょとんとした表情でキッドを見つめた。
内心かわいいと思いながらそっと唇を寄せる。
ちょんと軽く唇をあわせると、新一は暫し茫然とした後ボンッと真っ赤になってあわあわしだした。


「〜〜〜〜っ////」

「――――新一…」


甘く掠れた声で名を呼ばれて、新一はまた赤くなった。


まさか彼に名前を呼んで貰えるとは思ってなかった。
しかもキスまで////
どうしたらいいのかわからなくて新一は俯いた。


「新一。顔を上げて」

「…………っ……」


そろそろと顔を上げると、そこには綺麗な笑みを浮かべたキッドがいた。


「私は、――あなたが好きです」



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