「何故だい?快斗」
盗一の疑問に、快斗はぽつぽつと答えた。
ただ見たままをありのままに。
「テレビで、……」
それだけで黙り込んでしまった快斗に、けれど何かを見たのだろうと推測する。
俯いてしまった快斗の頭をポンと叩いて、急に抱き上げた。
「わぁっ……」
「好きなように呼べばいいよ。…ただ」
不思議そうな顔をする快斗に顔を近づけてこう言った。
「私の希望を叶えてくれるなら、父さんとかパパって呼んでくれると嬉しいな」
「ぇっ………………なっ////」
どうする?と意地の悪い顔で聞いてくる。
それにからかわれてるのだと気づいてもどうしようもなかった。
ただ嬉しかったんだ。
盗一の優しさが――。
*
そんな盗一が死んで、俺はまたこの世界に戻ってきた。
盗一を殺した奴に復讐するために…
なんてエゴだろう。
盗一がそんなこと望んでないことなんてわかってる。
それでも止まらない衝動――。
「少しくらい寄り道してもいいよな?盗一…」
彼を護るために少しだけ時間を。
「………………ん?」
新一はすべての捜査資料を見てあることに気づいた。
検死官がすべて同じ人物なのだ。
「ウィリアムソン…か……」
調べてみるかと調べてみた。
結果は――。
「両親と妹が一人。妹は数ヶ月前に事故死…か」
家族の写真をピックアップして新一は驚いた。
妹の――アンジェリカの瞳に。
「青い…瞳」
これが犯行に何か繋がりがあるのだろうか?
だが、これ以外に情報も証拠もない。
「やるしかない…か」
新一がやろうとしていることはただウィリアムソンに会いに行くことだけ。
青い瞳の殺人事件はあれからまだ起こっていない。
やるなら今しかない。
そんな心持ちで出て行く新一の姿を見つめる一対の瞳。
「こんにちは、ウィリアムソンさん」
「こんにちは。あなたは…」
ウィリアムソン宅に到着して話し掛ける。
今日は彼は休みの日だったから。
「実は、あの事件について聞きたいことが…」
「はぁ…」
2〜3質問していく。
その時、ウィリアムソンが何かに気づいて顔色を変えた。
「青い…瞳……」
「なんですか?」
「あ、いえ……あなたも青い瞳なんだなと思って…」
それはアンジェリカと同じ――いや、それ以上に鮮烈な蒼。
ウィリアムソンは目を見開いた。
「綺麗な色ですね」
「そこまでじゃありませんよ」
新一がにこりと笑って交わす。
それにウィリアムソンはぽつりと呟いた。
密やかに――。
「いえ、とても…」
- 12 -
*prev next#
章一覧 ページ一覧