一件目の被害者の親族から順に回っていっても、何の手がかりも得ることはできなかった。
皆、暗く被害者のことを想って涙を流していた。
落胆の色も隠さず新一はため息を吐く。
何か、何か突破口があれば…。
被害者の親族の為にも。


「青い瞳殺人事件…か……」


新一が新たに示唆した情報を元に、そう名付けられた。
これ以上被害者を増やすわけにはいかない。


「何故青い瞳なんだ?」


青い瞳に何かあるはず。
新一は最初の犠牲者が出た二ヶ月前に何かなかったか調べ始めた。
悩んでる暇はない。
一刻も早く事件を解決に導かなければ。


「青い瞳…」


その日は、夜遅くまで部屋の電気が着いていた。




「工藤君」

「警部。どうされたんですか?」


もう誰も残ってないだろうと思っていた新一は、かけられた声に驚いた。
どうしたのだろうと疑問に思い振り返った新一は、少し怒ったような警部の顔に出くわした。


「こんな時間まで何をやってるんだね」

「何って事件のことを…」


警部は新一のところまで来て頭をこつんと叩いた。
それに驚いて目をしぱしぱさせる新一。


「根を詰めすぎるのは良くないといつも言ってるだろう」

「…………すみません」


苦笑して謝った新一に、警部はため息を吐いて引いた。
警部は昔を思い出すように遠くを見つめる。


「君は昔からそうだった。無茶苦茶で何があってもメゲない」

「あの時のことですか?」


新一は恥ずかしそうに頬を染めた。
そう新一と警部がまだ一捜査官だった頃を。







「工藤新一君。何があったか話してくれるね?」
そう問いかけられた新一はゆるりと首を振った。
信用できなかったからじゃない。
純粋に自分の目的のために…。


「話してくれ。君の協力が必要なんだ」

「……お願いを、お願いを聞いて頂けるならお話します」

「なんだね」


その瞬間の新一の強い蒼瞳に全員が息を呑んだ。
何者にも折れない強い意思。
それをその場にいた皆が感じ取った。


「僕を、……俺をFBIに入れて下さい」


ざわりとその場の空気が揺れた。


「な、何を言ってるんだね。そんなことできるわけ…」

「なら俺は話しません」


新一に対応していた捜査官が気色ばんだ。
子供が何を偉そうにと思ったのだろう。


「大人を舐めるのもいい加減にしないと…」

「誰が舐めてるんですか?俺は本気ですよ」


新一は強い瞳で見上げてきた。







「あの時の君には本当に驚かされたよ…」


警部の言葉に新一は頬を染めた。
あの時は、本当に生意気なガキだった。
迷惑ばかりかけて…。


「ありがとうございました」


深々と頭を下げる。
あの後、俺のことをずっと見守っていてくれたこの人には頭が上がらない。


「私も君の両親が殺されたのは哀しかったし悔しかった」

「警部……」


哀しそうに微笑んだ警部に新一は少し動揺した。
警部は続けて言った。


「だから、私はあの時何があったのか聞く気はない。君の胸だけに仕舞っておくのが一番だろう」

「ありがとうございます」


最大級のお礼の言葉を。
顔に満面の笑みを浮かべて…。
あの時が何時のことかわかったから――。



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