ハア、ハア、ハアッ。
ずしゃりと地面に倒れ込む。
だめ、もっと遠くへ
速く逃げなきゃ――
必死に足を動かす女性に近づく足音が。
コツコツ、コツコツ
「いや、やめて――」
叫びも空しく、無慈悲な鉄槌は下ろされる。
「……………… 」
「これで五人目か……」
「ええ、そうですね」
新一は事件の捜査に赴いていた。
被害者の亡骸を見る。
「こりゃ酷いな…」
「まったくだ。胸糞悪い」
吐き捨てるように現場にいる刑事が愚痴る。
被害者は頭を殴られた後、目をくり抜かれていた。
同じような事件がここ最近続いている。
くり抜かれた目は、未だにひとつも見つかっていない。
どう考えても同一犯の犯行だった。
「被害者に何か接点はないのか」
被害者は男女ばらばら。
手掛かりはないように思われた。
だが、一人だけ気づいた人がいた。
被害者の共通点に。
「瞳…」
新一が唐突に呟いた。
全員が首を傾げる。
「目がどうしたって?」
「毎回瞳がなくなってることに意味があるんじゃないでしょうか?」
「おい、被害者たちの写真は?」
現場の刑事が声を張り上げた。
慌てて刑事が写真を持ってくる。
「持って来ました」
「――――何か共通点はあるか?」
新一がそれをしげしげと眺めて口を開いた。
「色…」
「色ぉ―?」
手を顎に添えて考え込みながら新一は言った。
「全員、瞳が青色です」
「確かに。言われてみれば…」
「まだ断定は出来ませんが恐らく間違いないかと」新一が言うのに刑事が頷く。
刑事が次に読んだのは検死官だった。
「はじめまして、ウィリアムソンと申します」
「早速だが遺体の状況と説明を」
刑事が促すと検死官は話し出した。
死因は、目をくり抜かれたことによる失血死。
頭を殴ってクロロホルムで眠らせてから犯行に及んでいると。
「兎に角何故犯人が青い目の人間を狙うのか。それがわからないことには捜査は進みません」
「そうだな…、徹底的に調べ上げるぞ」
はいっと意気込む声がその場に響いた。
新一は資料を見ていた。
今回の事件のものから過去に起きた四件の事件。
被害者は性別、年格好もバラバラ。
全員がクロロホルムで眠らされて、それから瞳をえぐり出されている。
犯行の手口からいって犯人は同一人物。
だが、それ以上の痕跡が残っていなかった。
まだ何かあるはずだ。
見逃してはいけない、手がかりが…。
「急がば回れ…とも言うしな」
よしっと新一は立ち上がった。
先ずは最初の被害者の家へ。
「悩んでるだけは性に合わねえ。見つけてやるぜ。真実ってやつをな…」
新一は力一杯足を踏み出した。
勝負はここから――。
「青い瞳を持つものを狙った連続殺人事件」
キッドは今フランスで一仕事終えたばかりだ。
そこに舞い込んできたこの情報。
キッドの頭に蒼い澄んだ瞳の青年が浮かぶ。
これは、今ロンドンで起こっている事件。
彼が関わっていても不思議ではない。
「どうか、無事で…」
手元にある資料を纏めて、キッドは行動を起こすことにした。
彼を護るために――。
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