†この恋は秘密の†





「出欠取るぞ〜」

教室に黒羽先生の声が響いた。
黒羽先生は俺のクラスの担任だ。
本名黒羽快斗には謎が多い。
コナンはいつも不思議に思っていた。
彼の態度、優しさを――。

「江戸川…江戸川〜」
「…………は、はい!!」

思わず立ち上がってしまってクラス中がどっと笑い転げる。
それにコナンは真っ赤になった。
こんな失敗小学生の時だってしたことがない。
それもこれも全部快斗が悪いんだ。

「江戸川。とりあえず座ろうな？」
「……はい…」

くくっと笑いを堪える快斗に、憮然とした表情でコナンは席に座る。
江戸川コナン、中学三年生。
黒羽快斗とは切っても切れない縁がある。
それはこの学園の教師工藤新一と黒羽キッドと関係している。
工藤新一はコナンの従兄弟に当たる親戚だ。
よく家に預けられたりした。
その新一と恋仲、所謂恋人と言われる存在がキッドだった。
キッドは快斗の一つ上の兄で一緒によく遊びに来ていた。
その快斗の姿を見てコナンは一目惚れしてしまったのだ。
快斗は現在23歳で新米の教師だ。
今年15歳になったコナンとは8歳の差がある。
コナンはこの恋は叶わないだろうと半ば諦めていた。
どうせ快斗からみたら年下の弟のような存在だろうと。

「江戸川、どうしたんだ？最近ボーっとしてるだろ？」
「何でもありません。ちょっと疲れてるだけです」
「そうか？じゃあ気を付けろよ」
「はい…」

心配そうな快斗にコナンの胸が痛んだ。
けれどコナンはそれに気づかないふりをしてその場を去った。
弟みたいな存在でもいい。
せめてそばにいさせて――。