【読書の秋というけれど…】







「しーちゃ」



「…………」



「しーちゃん」




工藤邸の書斎。
新一は読書をしていた。
その横では、一生懸命に話しかけている快斗の姿があった。







【読書の秋というけれど…】






「何だ?快斗」



新一は二度めの呼びかけでようやく快斗に気づいた。
新一は一度本を読み始めると時間も忘れるし、周りに人がいることも気づかない。
基本的に無視である。例え実の親でも、読書の邪魔をする者には容赦がない。
だが、快斗だけは違った。
新一は快斗にはとことん甘かった。
優しく話しかけると快斗は嬉しそうに笑った。



「しーちゃん、もう夜おそいよ。本の読みすぎはだめだよ」



快斗に言われてようやく時間を思い出す。



「そうか。もう、そんな時間か」

「しーちゃん。一緒にねよう」



快斗が小さな手を差し出してきた。
それに苦笑して、手を取る。
頭をくしゃくしゃ撫でてやると、きゃっきゃっと笑った。


――もう少し読んでたかったけど、仕方ないか



「そうだな。寝ようぜ、快斗」



新一は、快斗を抱き上げて寝室に向かった。その途中盗一さんにあった。



「新一君。快斗を寝かせてくれるのかい?」

「はい」

「ありがとう。お願いするよ」

「父さん、おやすみ」

「お休み。快斗、新一君」

「お休みなさい、盗一さん」



盗一と別れて寝室に入る。
ベッドに快斗を先に入れて寝る準備をして、新一もベッドに入った。



「お休み、快斗」

「おやすみ、しーちゃん」



おでこをくっつけて笑いあいながら眠りについた。


二人の穏やかな寝顔は、月だけが見てた。





おまけ

「眠ったみたいね」

「本当。可愛いわ新ちゃんも快斗君も」

「本当にね。天使の寝顔だよ」

「まったくだな」


こっそりと二人の両親が覗き込んで見ていた。どうやら月だけではなかったそんな秋の1日。た。



「お休み、快斗」

「おやすみ、しーちゃん」



おでこをくっつけて笑いあいながら眠りについた。








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