◇一歩踏み出して




もうすぐ冬休み。
クラスメートが遊ぶ約束をしてるのを遠くから見ていた志保は須藤に話しかけられる前に佐々木さんに捕まった。
この人は佐々木美絵。
このクラスに転校してきてからよく話しかけてきてくれる明るくて優しい子だ。

「ねぇ、宮野さん。宮野さんも一緒に遊びに行かない?」
「私?」

美絵はどことなく小さい頃仲良しだった歩美に似ていた。
だからか自然と甘くなってしまう。

「うん!宮野さんと遊びに行きたい」
「いいわよ」

志保は快く誘いを受けた。
美絵の顔が明るくなる。

「ありがとう!ねぇ?」
「何?」

志保は美絵の問いかけに首を傾げた。
美絵の頬が紅く染まる。
志保がますます心配すると、美絵が口を開いた。

「あのさ、工藤君と仲いいんだよね?」
「まぁ隣に住んでるし…」
「じゃあお願い。工藤君も連れてきてくれない?」
「え?」

びっくりした。
まさかそんなことを頼まれるとは。

「こんなこと頼めるの宮野さんしかいないの」
「…………」

頷く以外に何ができただろう?






かったるい終業式が終わって冬休みが始まった。
志保は美絵との約束を果たそうと新一のクラスへと来ていた。
帰ってからでもよかったのだが何となくそんな気分だったのだ。

「くど…」
「新一!」
「何だよ、蘭」

仲良くじゃれあっている新一と蘭に志保はズキリと胸を痛めた。
その姿はまるで恋人同士に見えてまぶしかったのだ。


−−何やってるんだろう、私…


志保が踵を返して帰ろうとした瞬間、声が呼び止めた。

「宮野先輩!」
「くど、くん…」

駆け寄って来る新一に逃げ出したくなった。
帰りたい。
お願いだから、嬉しそうに駆け寄って来ないで。

「何か用事?もしかして迎えに来てくれたとか?」
「違うわよ。実は友達が…」

志保は美絵との約束の話をした。
すると新一が何だか微妙な顔をする。
何だろうと疑問に思っていると。

「それって須藤先輩も来る?」

志保は頷いて判決を待った。
新一が口を開く――。







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