◇噛み合わない心



「なぁに。あやつまた宮野先輩のところ行ってんの?」
「……うん、そうみたい」

蘭は哀しげに顔を俯けた。
それに園子が慌てて元気づけようとする。

「大丈夫だよ。新一君隣人だって言ってたじゃない」
「でも、新一…」

まるで恋してるみたい。
そんな気がして蘭は不安で仕方がない。
新一が宮野先輩を好きだったらどうしよう?
それだけが頭の中をぐるぐる回る。
すると、園子がポツリと呟いた。

「でも、新一君まるで恋してるみたい」
「…………ぇ?」

園子も私と同じこと考えてた?
一度消えそうになった不安がまた溶け出して来る。
どうしよう。
どうしたらいいの?
教えてよ、新一…。

「俺がどうしたって?」
「新一…」
「新一君」

園子がターゲットを見つけたかのようにキラリと目を輝かせて新一に声をかけようとした。
けれどそれを蘭が阻む。
今はまだはっきりさせたくなかった。

「何でもないの」
「蘭…」

園子が心配そうに見つめてくるのに蘭は弱々しい笑顔しか返せなかった。






どうしてだろう?宮野が須藤先輩と仲良そうに話してるのを見るとイライラする。
笑いあって、穏やかな表情をしてるのは嬉しい筈なのにどうしてももやもやが消えない。
だから今日も邪魔をしに来てしまう。

「宮野先輩」
「工藤君…」
「また来たのかい?」

余裕そうな須藤の態度に腹が立つ。
こんな奴のどこがいいんだ。
俺は絶対認めねぇ。
新一は決意を新たにした。

「別にいいじゃないですか?宮野先輩と須藤先輩はただの友達でしょう?」
「君こそただの隣人だろう?少し馴れ馴れしいんじゃないかい?」

にこにことした熾烈なやり取りが繰り広げられる。
それに志保はため息を吐いた。
何を考えて此処にいるんだろう?
彼は一体何を考えている?
私には一番知りたい彼の心だけがわからない。

「宮野先輩だって別に迷惑ではないでしょ?」
「え?……えぇ…」

思わず肯定してしまってからしまったと思った。
ここで拒絶すれば新一はもう来なかったかもしれないのに。
どうしても新一のそばにいると離れがたくなってしまう。
本当に馬鹿みたいだ。
想いは一方通行なのに…。
向かい合うことなんてないのに。

「宮野さん。本当に迷惑じゃないの?」
「−−どうして?」

志保は聞いてきた須藤に不思議そうな顔を向けた。
何故そんなこと聞くのだろう?
別に関係なんて全くないのに…。
それが志保にはわからない。

「とにかく。僕たちの学年は受験勉強で忙しいんだ。特に宮野さんは転校してきたばかりだし…」
「でも宮野先輩はもう推薦状貰ってるでしょう?後は試験を受けるだけ。宮野先輩の成績なら余裕でしょう?」

志保は考えることを放棄した。
確かに須藤君と話すのは楽しい。
でも、新一に突っかかるような言動が何故か気に障る。
志保は重い口を開いた。

「とにかく。私は自分のことは自分で出来るわ」
「じゃあ、大丈夫ですよね?」

にこにこ笑顔の新一が嘘臭い。
周りの女子がキャアッと叫ぶのも不快だった。







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