◇鈍くあることで逃げたのは



「ね……」
「宮野さん!」

話しかけようとした瞬間、後ろから腕を掴まれた。
気を抜いていただけに驚いて振り返ると須藤がそこにいた。

「なに…?」
「あ、えと…」

志保が不思議そうに問いかけると須藤がしどろもどろ答える。
辛抱強く待つと漸く須藤がしっかりとした口調で言った。

「次一緒に乗り物乗らないかい?」

そう聞いてきた須藤に首を傾げる。
私と乗り物乗って何か楽しいの?
可愛げな反応ができるわけでもないし。
困っていると横から助け船が出た。

「ダーメ!宮野さんは私と乗るんだから」

横から出て来た美絵がさらりと須藤を追い払おうとする。
そういえば彼女たちは最初から須藤が来るのにいい顔をしなかった。
何故だろう?と考えていると、新一まで口を挟む。

「それに宮野先輩は終わったら俺と乗り物乗るんですもんね」

にこりと有無を言わせない表情で問いかけられて思わず頷く。
それに悔しそうに須藤が引いていった。

「………そんなに乗り物乗りたかったのかしら?」
「工藤君」
「佐々木先輩」

はあっとため息を吐いて顔を見合わせる美絵と新一。
それに志保は大いに混乱し、大いにたじろいだ。何より自分以上に新一と分かり合えている美絵が驚きで仕方がない。
どうして−−。

「まったく。無自覚な人は…」
「本当ですね」

ため息を吐いた新一にハテナマークの志保。
それにこっそりため息を吐いて美絵は心の中で囁いた。
私が言ったのには工藤君も含まれてるんだけど…。
そのことに本人たちだけが気付かない。

「とにかく行ってくるね」
「じゃあ…」

そのまま志保たちは乗り物に並びに行った。






「工藤君」
「何ですか?須藤先輩」

新一が振り返ると須藤がじとりと睨み付けてくる。
それに新一は平坦な声で返した。

「君は宮野さんのことをどう思ってるんだい?」
「親友で盟友。誰よりも頼りになる相棒だと思ってますが」

さらりと新一は言い切った。
それに須藤が意地汚く笑う。
それを不快に思いながら新一は須藤が口を開くのを待った。

「宮野さんのことをなんとも思ってないのなら、もう僕の邪魔をしないでくれないかい?」
「邪魔?」新一が何を言ってるんだという雰囲気で須藤を見つめた。
勝ち誇ったように笑われるのが不愉快でならない。

「だって宮野さんのことを何とも思ってないんだろう?君に宮野さんの恋路を邪魔する権利があるのかい」
「俺は…」

俺は宮野のことをどう思ってるんだろう?
親友?相棒?
いや、もっと大切で愛しい何か。
知ってた筈なのに思い出せない気持ち。

「とにかく僕たちの邪魔をしないでくれ」

それだけ言って須藤は背を向けた。







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