だけど、今目の前にあることは現実で。




銃声がビルの屋上に響いた。






だけど、今目の前にあることは現実で。





ここは怪盗KIDの中継地点のビルの屋上。新一はそこで怪盗KIDを待っていた。
本当に黒羽先生なのか?考えても分からない。
すると、突然現れた冷涼な気配。


「おやおや、珍しいお客さんですね。今晩は」
「KID!!」


ばっと振り返ると、白いマントにシルクハット、白いスーツに青いシャツに紅いネクタイ、単眼鏡をつけたレトロな怪盗がそこにいた。
見たところ、外見的には二十代半ばから後半にかけて。確かに黒羽先生と同じくらいだな。
でも、雰囲気がまるで違う。どうなんだろう?
KIDは月を背にシルクハットの鍔を下げて、口元にシニカルな笑みを浮かべている。
白い衣装に月が恐ろしい程によく似合っていた。
その姿に胸がドキドキする。



「こんなところで何をしてるんですか?」
「お前は…」



黒羽先生なのか?聞こうとした時。




パンッ


一発の銃声が響いた。
ばっとKIDが動く。


「此方へ」
「えっ……」


KIDに引っ張られて給水塔の陰に隠れる。抱き込まれてドキドキした。この気配は…この温もりと微かに薫る匂いは。黒羽先生と同じ…。
嘘だと思いたかった。でも、自分の感覚が、感情が目の前の現実を肯定していた。



KIDがトランプ銃を撃つ。すると、銃声が止んだ。トランプが当たったのだ。



「もう、大丈夫で…」
「く、ろば…先生?」




KIDが抱いていた手を弛めると、新一がKIDを…快斗を見つめていた。この至近距離では顔が丸見えだ。快斗は誤魔化すのを諦めた。




「もうすぐ警察が来るだろう。話が聞きたいなら一緒に来て」



手を差し伸べられた。新一は…その手を取った。


真実を知るために。何より、黒羽先生のことが知りたいから…。






お題配布元→水葬





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