こんなに幸せなのって、サンタクロースを信じたくなるね。




終業式。
今日で学校は終わり。
そして、そして、今日はクリスマスイブ。






こんなに幸せなのって、サンタクロースを信じたくなるね。





「ねぇ、黒羽先生」


新一は教えて貰っていた勉強を中断して快斗を見上げた。見上げた快斗は優しく笑っている。
ちょっとならいいかな?と返事をする快斗に少し我が儘を零してみた。


「何?新一?」
「今日、一緒に過ごせませんか?」


真っ赤になって誘って来る新一に快斗は目をしばしばさせた。本当は自分が誘って驚かそうと思ってたのに。
予定は崩れたが可愛い新一が見れたからよしとしよう。


「いいよ。今日はクリスマスだしね。プレゼントもあるんだ」
「いや、あの…」


そうじゃなくて、今日1日のすべての時間が欲しいのだ。快斗の時間すべてを独り占めしたい。
新一は恥ずかしさで真っ赤になりながら快斗に言った。はっきり言わないときっと伝わらないから。


「新一?」
「今日家に泊まりませんか?」


泊まりに誘うと言うことはつまりああいうことでそういうことで。新一は恥ずかしさに消えてなくなりたくなった。
快斗はぴたりと動きを止めている。


「あの…黒羽先生?」
「−−−−うん!!」


ギュッと抱き締めてくれる快斗の腕が温かかった。
それからもう少しだけわからないところを勉強して街をブラブラしてから帰った。快斗は終始笑顔で優しくてとても嬉しかったし楽しかった。



「…………新一?」
「え?何で…」


車で家に着くと電気がついていた。何で?と思ったがすぐに予想がついて頭が痛くなる。新一が唸っていると、玄関がバンッと音を立てて開いた。


「新ちゃ〜ん」
「か、母さん。帰って来るなら連絡してっていつも…」


そこではたっと快斗の存在に気付いて新一を抱き締めていた有希子は新一から離れた。その様子にどうしたんだろうと首を傾げる。
そして気付いた。快斗がいる不自然さに。新一は慌てて誤魔化そうとした。


「あの、母さ…」
「快ちゃん!大きくなって…」
「お久しぶりです。有希子さん」


快斗は抱き付いてきた有希子を抱き留め微笑んだ。それに一人ついていけない新一。
快斗に尋ねようとした瞬間、もう一人家の中から現れた。


「有希子、新一。そんなところじゃ快斗君に失礼だろう?さ、家にお入り」
「お久しぶりですね、優作さん」


快斗はもう一度ぺこりとお辞儀した。
楽しかったクリスマスがあっという間に吹き飛んでいった。






お題配布元→水葬





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