それはどこまでも叶わぬ願い。 初めてだったから、怖かったんだ。 拒絶されたらどうしようって…。 でも、あなたを見ていたら、愛しさが込み上げて来て嬉しかったんだ。 それはどこまでも叶わぬ願い。 新一はHRをぼうっとしながら聞き流していた。考えているのは数日前のあの日。快斗との間にあったこと。 あの後、快斗は息を呑んで新一を凝視した。そして、掠れた低い声で言ったんだ。 『どうなっても知らないよ…』 更に後にあった出来事を思い出して新一は真っ赤になった。あ、あんなこと/// 首をぶんぶん振った瞬間、新一に声がかかった。 「おい、工藤!」 「え?な、何!?」 動揺して裏返った声にクラス委員がびっくりしている。しまったと思ったがもう遅かった。 「工藤話し聞いてなかったな…」 「え?いや…」 「そうかそうか。そんなに女装がしたいか…」 「な、ちょ…」 「という訳でクラス対抗クイーン大会出場者は満場一致で工藤に決まりました」 わあっとクラス中で歓声が上がる。新一はショックを受けて机に突っ伏した。 「酷くないですか!?」 「まあまあ」 快斗に宥められて新一はシュンとうなだれた。そんなことやりたくない。 けれど逃げられる筈もなかった。落ち込む新一に快斗が笑って言った。 「それに、俺も新一の女の子の姿みたいな」 「……本当に?」 「うん。だから、ね…」 促されてこくりと頷いた。快斗がみたいと言うなら、やってもいいかもしれない。 そう思った。 「ありがとう、黒羽先生…」 「それでね…、新一…」 「失礼するわね。黒羽君」 ガラリと突然扉が開いて小泉先生が入って来た。それに驚いて新一は快斗と距離を取る。 「それじゃあ、失礼しました」 「あ、しん…」 「あらあら。行っちゃったわね」 「紅子、わざとだろ」 「何のことかしら」 くすりと笑って紅子は快斗の肩に手をかけた。それを憮然として快斗が払いのける。 また今度話せばいいか、と考えながら快斗は新一のことを想った。 俺以外の人を見ないで。お願いだからそばにいさせて――。 お題配布元→水葬 戻る |