ただ、ただ、ひたすら。




「黒羽先生、好きです」

数学準備室。2人の人間が相対していた。





ただ、ただ、ひたすら。





新一はドキドキしていた。

始業式の日、初めて逢ったときから好きだった。桜並木の下に悠然と立っていた姿。紫紺の瞳に見つめられた瞬間に胸が高鳴った。一目惚れだった。
一目惚れなんて信じてなかったけど、黒羽先生を初めて見たとき本当にあるんだなって思った。
それから、ずっと見て来たのだ。ずっと。最初は嘘だと思った。勘違いだって…。
でも、黒羽先生の笑顔を見る度に胸が高鳴ってただ、ただ、好きなんだって気づいた。俺は先生が好きなんだって。どんなに否定しても勘違いだと思おうとしても、この想いだけは変わらないんだって。


俺は、黒羽先生のことが好きなんだ。


この想いを伝えようか凄く迷った。でも、応えが欲しいと思ったから勇気を出して告白した。
ギュッと目を閉じていると、微かに黒羽先生が動いたのに気づいた。











「ごめん、工藤。俺はお前をそんな風には見れない」



ズキッと胸が傷んだ。目の奥が熱くなってくる。泣いちゃダメだ。まだ……。




「そう、ですよね…すみません。先生。これで失礼します」



新一はその場から急いで立ち去った。蒼い瞳から一滴の涙を零して。
ぱたぱたと遠ざかっていく足音を聞きながら快斗は自嘲気味に笑った。






「ごめん、工藤。でも俺はお前が思ってるような人間じゃないんだ」



ポツリとこぼされた独白は、誰にも聞かれることなく空間に霧散した。






お題配布元→水葬





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