手を繋ぐことさえドキドキして。




手を引っ張られて歩く。
そんな些細なことにさえドキドキして、おかしくなってしまいそう。
感じる熱が嬉しかった。






手を繋ぐことさえドキドキして。





「新一…」


車に到着すると、漸く黒羽先生が話しかけてきた。ついさっきも聞いたばかりなのに、それにさえ胸が高鳴る。
自分がしてしまったことを思い出して新一はポンッと真っ赤になった。振り返った快斗に手を引かれ気付いたら抱き締められていた。

「ちょ、先生!ここ外!」


慌てて引き剥がしたら快斗が不満そうな顔をした。そしてちょっと考え込んだと思ったらいきなり車の中に連れ込まれた。


「く、黒羽先生!」
「新一…」


強く抱き締められて胸が高鳴る。けれどいつ見られるかわからない車の中での身体的接触は心臓に悪かった。
引き離そうと手を動かした瞬間、快斗の一言に固まった。


「新一の…新一の唇が汚れた」
「え?……は?」


意味がわからず首を傾げると快斗がぽつぽつと心情を吐露した。


「新一が自分からキスしてくれて嬉しかったんだ。でも、初めての新一からのキスなのに…奏と間接キス……」
「黒羽先生…」


哀しげに顔を歪める快斗をそっと抱き締めた。自分だって嫉妬しているのだ。
快斗にキスをした奏に対して…。新一はだからそっと快斗に囁いた。


「それなら、先生が綺麗にして…」
「新一…?」
「俺だけだって教えて…」


不安なのだ。快斗はモテるから。だからいつ心変わりするか、いつもっと素敵な人を見つけるかわからない。
だから証拠が欲しかった。ずっと好きだという証拠が。今だけでもいいから。せめてそばで体温を感じていたい。


「ねぇ、先生…」


抱いて−−。
快斗が息を呑んだ気配が伝わって来た。






お題配布元→水葬




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