それは現か幻か。




何度目かの病院。
今日もまた同じ事を繰り返すんだと俺は勝手に思い込んでた。
同じ人が好きなライバルだってわかってた筈なのに――。






それは現か幻か。





病院で黒羽先生に花瓶の水を替えてきてくれないかと頼まれた。新一はそれに快く頷いた。
花瓶に水を入れながら思う。黒羽先生と白田さんのことを。親友というだけで、親しいというだけで不安になる。
今は黒羽先生は俺だけを見てくれるけど、いつ違う人のところに行っちゃうかわからないんだ。それはいつも新一の心の中にある不安。
だって黒羽先生はモテるから…。


「く…」
「なぁ、快斗?」
「何?奏」


話し声が聞こえてその場から動けなくなった。激しい警鐘が鳴る。けれど、そこから一歩も動けなかった。
怖い、聞きたくないと思うのに身体が動かない。
黒羽先生――。





「俺…お前のことが好きだよ…」
「奏?俺も好きだよ。だって友達だろ?」


快斗の満面の笑みと答えに奏は苦笑した。
本当に鈍いんだから。きっとこの言葉の意味もきちんと把握してない。でも、この気持ちに一区切りつけなくちゃ先に進めないから。だから…。


「快斗…」
「奏?おい、大丈…」


俯いた奏を心配して近づいて来た快斗を引っ張って唇を合わせる。これが事故だったと思わせるために――。
快斗の驚いた顔が目に入った。
その時、ガラリと扉が開いた。それをビックリしたように快斗は見てた。






お題配布元→水葬





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