一人じゃないよ、僕がいるから。 病室の前。 快斗は一瞬止まって深呼吸した。 震える腕に新一はそっと手を添えた。 大丈夫だよ、一人じゃないよ、って伝えたくて…。 一人じゃないよ、僕がいるから。 ガラリと病室のドアを開けると、そこにはこの間ちらりと見かけた人がいた。親友さんだったんだ、と新一は安堵した。 窓の外を見ていた人が振り返る。 「快斗、よ!元気か?」 「元気だよ。この前会ったばかりだろ?奏」 明るく笑う奏が、ふと新一に視線を移した。そして優しく笑った。 それはとても綺麗な笑顔。 「ってお客さん?初めまして俺は白田奏」「は、初めまして。工藤新一です」 「あれ?見覚えがあると思ったら、もしかして高校生探偵の工藤新一?」 「え?は、はい!!」 思わず声が大きくなってしまって新一は真っ赤になった。それにくすくす笑う快斗と奏。奏はふと切なげに快斗を見つめた。 それに気付いたのは新一だけだった。快斗にずっと片想いしてた新一だけ…。 快斗が居住まいを正して奏に告げた。残酷な現実を――。 「紹介するよ、奏。俺の恋人の新一。これからも時々連れてくるから仲良くしてやって」 「――――恋人…?」 「どうかしたのか?」 「いや、何でもない。おめでとう、快斗」 一瞬驚きに目を見開いた奏。それを新一は見つめていた。哀しげな瞳は以前の自分を思い出させて、新一を凍り付かせた。 気づいてしまった。奏の気持ちに。それは切なさに満ちていた。 お題配布元→水葬 戻る |