瞳に映るすべての色たち。 からからの快晴。 けれど心の中は憂鬱で、新一の心は晴れなかった。 まるで世界のすべてが灰色。 快斗が迎えに来た車の音が合図。 瞳に映るすべての色たち。 「急にごめんな…」 快斗が車を運転しながら謝る。それに新一は首を横に振って笑った。謝る程のことじゃないと。 「大丈夫ですから」 「でも一応受験生だし…。新一の成績なら大丈夫だろうけど」 「平気です。それより今日は何しに行くんですか?」 これで別の人を紹介なんてされたら耐えられない。新一は覚悟を決めて聞いた。 快斗は車を駐車場に止めてゆっくりと話し出した。 「この前親友がいるって言ってだろ?」 「はい……」 今でも覚えてる。辛そうな黒羽先生の表情。快斗が自嘲気味に続けた。 「新学期が始まって少ししてから連絡が来たんだ。目を覚ましたって…」 「………………!?」 「俺のせいで植物状態にまでなったのに、あいつ笑うんだよ。俺に向かって」 「黒羽先生…」 なんて馬鹿なことを考えてたんだろう?黒羽先生はずっと苦しんでたのに。新一は体を伸ばして快斗を抱き締めた。 病室に駆けつけた時、何て罵倒されるのか怖かった。歯痒くて、怖くて体中が震えた。でも奏は笑って「よ、快斗。いい男になったな」って笑ってくれた。 前みたいに、いつも通り接してくれた。それが泣きたいほど嬉しかった。 体が小刻みに震える。新一が快斗の体を更に強く抱き締める。少し落ち着いてきたのか、快斗の震えが止まった。 「だからさ、奏には新一を紹介したいんだ」 「黒羽先生」 「いいか?新一…」 「うん…」 ありがとう。不安が雪のように溶けていった。鮮やかにつく色。 黒羽先生が一緒なら、大丈夫――。 お題配布元→水葬 戻る |