どうして、雨の音を聞くと落ち着くんだろう。




さあっと外で雨が降っている。
新一はそれを教室の窓から密かに見つめていた。
それは自分の心の中に似ていて、新一は余計切なくなった。






どうして、雨の音を聞くと落ち着くんだろう。





あの日、黒羽先生に振られた日から雨の音を聞くと何故だか落ち着けた。それは、何だか抱き締めて貰っているときの鼓動の音に似ていて、それが何だか心地いい。
付き合う前はただ冷たく叩きつけてくるだけだった。でも今は温かく感じる。
けれど時は残酷で刻々と時間は進む。



「黒羽先生……」


もう直ぐ受験本番。勉強に集中しなきゃならないのに、何故かそれができない。
理由はわかってるんだ。これは、黒羽先生との約束の代償。それでも嫌だとは言えなかった。
だって、黒羽先生が好きだから。






さあっと心地よい雨の音が響く。うつらうつらといつの間にか眠ってしまっていた。温かい夢を見た。
快斗が優しく抱き締めて「大好きだよ」と囁いてくれる夢。両想いになった日の夜の夢。温かい夢。
いつかなくなってしまうのかと思ったら急に怖くなった。嫌だ。いなくならないで。ずっとそばにいて――。
それが儚い願い。でも、それだけが新一の真実。


約束の日は明後日。新一はまんじりとしないまま複雑な心境でその日を過ごした。
どうか、幸せな夢を見させて――。






お題配布元→水葬





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