番外編〜夏祭り〜




「工藤、夏祭り行こっか」
「ぇっ……?」


そう言って黒羽先生は笑った。






番外編〜夏祭り〜





「うわぁっ!!」


車で三時間くらいしてついたのはこじんまりとした神社と昔懐かしい鳥居だった。それは小さい頃祭りに来た思い出が蘇るような昔懐かしい光景。つい子供みたいにはしゃいでしまって新一は真っ赤になった。
それに快斗はくすりと笑って祭り太鼓の方を指差す。


「あっち行ってみようか?」
「は、はい……」


手をさり気なく握られて新一の心臓がどきりと音を立てる。そのまま手を引かれるままに新一は快斗に着いて行った。
因みにふたりとも浴衣だ。快斗がお揃いの色違いの浴衣を見せた時、新一は真っ赤になった程だ。とにかくお揃いというのが恥ずかしかった。
周りでは祭囃子に太鼓の小気味良い音、子供たちのはしゃぐ声が響く。そんな中を出店を眺めながら歩いた。


「新一はさ、こういう静かなところの方が好きだと思って…」
「黒羽先生…」
「やっぱりここにして良かった。少ないけど花火もちゃんと上がるんだよ」


そう言って先を歩く快斗の浴衣の袖をくいっと引いて立ち止まらせた。そして精一杯の小さな声で俯いて言った。


「ありがとう、ございます…」


快斗が花が綻んだように笑う。それを真っ正面から見た新一は真っ赤になって上目遣いで快斗を見上げた。それに内心焦りながら快斗は新一を連れ立ってまた歩き出した。
途中でかき氷を買ったりして神社の外れまでやって来た。人気はなくなっている。すると、パーンと大きな音がして花火が打ち上がる。色とりどりの花火はとても綺麗だ。


「綺麗…」
「気に入った?」
「はい、すごく…」
「実はね、ここ裏家業の時見つけたんだ。雰囲気が気に入ってて毎年一人で来てたんだ」


内緒話のようにこっそりと快斗が教えてくれた。そんな話が出来ることが嬉しくて新一はくすくす笑う。
これから沢山のことを知って行くんだ。
花火がふたりの影をひっそりと照らし出した。





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