最後くらい笑顔で、なんて、私のエゴ。




気づかれちゃいけない。
これが多分、最後だから…。






最後くらい笑顔で、なんて、私のエゴ。





新一はいつの間にか、無意識に足が快斗の家へと向かっていた。気分とは真逆の真っ青な晴れた空。呼び鈴を鳴らすと直ぐに返答が返ってくる。その快斗の声を聞いて、新一は泣きたくなった。
でも、心配かける訳にはいかない。多分これが最後だから、笑顔でいたいなんて…。なんて自分勝手なんだろう。


「工藤?どうしたんだ?」
「ううん。近くまで来たから顔みたくて…」


新一は、精一杯笑って誤魔化した。正直怖かった。何をされるか解らない。怖くて怖くて逃げ出したいけど、でも黒羽先生を守るためだったら…。
ところが、快斗は余計に心配そうな顔をして新一の肩を掴んだ。不安そうなのは直ぐに解った。何かがあったんだって。でも、新一に何があったのか解らない。だから…。


「なぁ、くど……新一。何があった?」
「何もないよ。またね、先生」


掴まれた肩を解いて、新一は背を向けた。その背を見つめる快斗の視線に気づかぬまま心の中で別れを告げて…。



さよなら、黒羽先生……






お題配布元→水葬





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