あなたがいるから、今日が楽しい。 期末試験が終わって…受験生にとって大切な夏休みがやって来る。 あなたがいるから、今日が楽しい。 夏休みが始まって何週間か経った頃、新一は快斗に『受験勉強みてやるから家に来ないか?』と誘われた。新一はそれが嬉しくて嬉しくてその日を何日も前から楽しみにしていた。 そして当日。 新一は快斗の車で、快斗の部屋に連れて来てもらっていた。黒羽先生は、数学だけじゃなくて英語や国語も見てくれた。 「ここは、この方程式を…」 「あっ、そうか。ここをこうして…」 「そう。よくできたな」 快斗が頭を撫でるのに、新一は嬉しいような切ないような複雑な気持ちになった。快斗の繊細な大きな手で触れられるのは嬉しい。でも、子供扱いされてるようで嫌な気持ちもある。 新一が複雑な表情をしていると、快斗が不思議そうに聞いてきた。 「どうしたんだ?工藤」 「いえ。なんでもありません」 「そうか。じゃあ次は…」 その後、国語を教えてもらったり英語がもう解っていることを知ると、何故かフランス語ドイツ語の勉強に様変わりしてしまったり楽しく過ごした。全然勉強をしたという気がしなかった。ただ面白くて楽しくて、笑いが絶えなかった。 「どう?少しは捗った?」 「はい。ありがとうございます、黒羽先生」 マンションのエントランスを通りながら話した。この時は気づかなかった…。この姿を人に見られているなんて…。 「黒羽君……、工藤君…」 この時の俺は幸せで、波乱の兆しに気づけなかった。 お題配布元→水葬 戻る |