叱ってください、愚かな奴だと




「馬鹿!!何でこんなことしたんだよ!!」



叱ってください、愚かな奴だと



組織を潰しに乗り込んだ日、俺は流れ弾に当たって血を流していた。

やっと、やっと組織を潰すことが出来た。ずっと思ってた。それが、俺の役目だって。成し遂げた役目に急速に力が抜けていく。
ああ、やっと此処まで辿り着けた。自分が騙し、欺いてきたことが終わった。
彼はまだ自分のことを覚えていてくれるだろうか。忘れていて欲しい。でも、忘れないでいて欲しい。薄れゆく意識の中、2つの思いがせめぎあって交差する。

「ごめんね、新一」
「まったくだ。バーロー」

とうとう幻聴まで聞こえるようになってきたか。俺もそろそろヤバいなと思っていると、新一が怒鳴った。

「勝手に居なくなって、勝手に死にそうになってんじゃねえよ!!おい!聞いてんのか!?」

そう言いながら揺すられて、ようやくこれが現実だと気づく。

「しん…いち…」
「快斗、今灰原呼ぶから待ってろよ。快斗…快斗!」

そこで、快斗の意識は途切れた。




「灰原、快斗は!?」
「落ちついて工藤君。黒羽君なら大丈夫よ」

それを聞いて、新一はあからさまに安心した顔をした。

「もう直ぐ目が覚めるわ。言いたいことがあるんでしょう。行ってきたら」
「サンキュ!灰原」

そう言って地下室に降りて行った。

「この貸しは高いわよ。黒羽君」

クスリと笑って哀は言った。




ぼんやりと意識が戻ってくる。快斗は周りを見回して新一を見つけた。一瞬夢かと思った。でも新一が怒っていたので、夢じゃないと気づいた。

「馬鹿!!何でこんなことしたんだよ!!」

新一は怒っているのに泣きそうな顔をしていた。自分がさせたのかと思うと、悲しい。

「ごめんね、新一。俺のことに、巻き込みたくなかったんだ」
「それが馬鹿だって言ってんだよ!巻き込みたくなかっただって!ふざけんのも大概にしろ。お前は俺たちに関わってきたのに、自分の時だけ1人で行こうとするな!!残された俺たちの気持ちがお前には分からなかったのかよ!!」

叫ぶだけ叫ぶと、新一もようやく落ちついてきたようだ。
そして快斗は自分の過ちに気づいた。

「ごめんね、新一。あんなこと言って。好きだよ」
「遅いんだよ。バーロー!…俺も…、好きだ」


愚かな奴だと叱ってください。これからも側に居させてください……。


END


おまけ

「黒羽君」

その声に快斗はビクッと肩を揺らした。

「分かってるでしょうね」
「ごめんなさい(>_<)」


今度こそEND


お題配布元→Rat Of Snow