呼んでください、ぼくの名を





その唇で…声で、呼んで欲しいと思った。



呼んでください、ぼくの名を



星と月が輝くネオン眩しいビルの屋上。
そこに悠然と降り立った白い怪盗。

「今晩は、名探偵。今宵も良い月夜ですね」

KIDは俺にそう優雅に声をかけてきた。
奥の深い、温かみのある声。
その声を聞いて、新一は無性に名前を呼んで欲しくなった。
何の反応もみせずに、ただ見つめてくる新一にKIDは不思議に思った。

「名探偵。どうかなさったのですか?」

心配そうに声をかけてくるKIDに新一はぼそりと言った。

「名前…」
「はい…?」

良く聞こえなくてKIDは聞き返した。

「だから、名前呼べって言ってんだよ!!」
「?…名探偵?」

意味が良く分からなくて取りあえず呼んでみる。すると新一は不満気な顔で、

「違う」

と言った。
違うとなると……KIDは頭をフル回転させていた。でも、流石にIQ400でも解明する事は無理だった。

「あの、違うとは……」

KIDの困惑した表情に、新一は赤くなって言う。

「だから名前で呼んで欲しいって言ってるんだよ」

そこでようやく意味を理解した、KIDは新一を呼んだ。

「新一?」

そう呼ばれた途端、新一は真っ赤になってだっとの如く逃げ帰って行った。
それを半ば呆然と見送ったKIDは、何だったんだ?と思いながら空へと消えた。


君に名前を呼ばれて初めて気づいた想い。
君のことが好き。
その声でもっと名前を呼んで……。


END


お題配布元→Rat Of Snow