泣いてください、声を上げて





そんな顔して笑わないで、泣いてください。



泣いてください、声を上げて



事件があった。哀しい事件が…。ある恋人がいた。2人は愛し合っていた。でも、それに嫉妬したある女が彼女を唆して恋人を殺させた。彼女はそれを知って自殺を謀った。

新一は、その事件から帰って来てから元気がない。儚く悲しそうな表情をしているのに、それでも笑っている。
そんな顔して笑わないで。

「新一」
「快斗…」

そっと近づいて抱きしめた。そっと頭を撫でながら新一に言った。

「新一、泣いても良いんだよ。悲しかったなら泣いても良いんだよ。俺がいるから…。新一には、俺が。だから我慢しなくて良いんだよ」

ポンポンと背中を叩きながら、優しく言い聞かせる。じわりと新一の蒼い瞳に涙が溜まって来た。そしてしゃくりあげながら泣き始めた。ゆっくりと顔を上げて、顔中にキスを落としていく。頬から涙を舐めとって眦にキスを落とす。瞼の上やおでこ、鼻の上そして最後に唇へ。
くすくすとくすぐったそうに新一が笑った。


悲しそうな顔をしないで。悲しくなるから。泣いてください、我慢しないで。そして、笑ってくれたら……。


END


お題配布元→Rat Of Snow