俺の声は、オメーの心の奥に届くかな…?
「さよなら、蘭姉ちゃん」
子供が一人消えた。それは呆気ないほどに唐突に。驚愕して、目を見開いていた彼女に、俺は何も言えなかった。
ただ、知って欲しくて伝えた。会って欲しい人がいるのだと。喜んでくれるだろうか?写真を見て哀しげな表情をしていた、誰よりも大切な人。
「コナン君、どこ?」
待ち合わせの場所でコナンを探す彼女に、俺はゆっくり近付いた。
「蘭…」
「…………っ!?あなた、は…」
「久しぶり、蘭。今日はコナンは居ねーんだ」
求めていた姿をあげられないのに、少しの罪悪感を覚えながら俺は口を開いた。
「オメーが記憶をなくしてることは知ってる。ただ、ずっと心配してくれてたオメーには伝えたいことがあるんだ」
「……………ぇ?」
目を見開く彼女に、心からの笑みと言葉を−−。
「ただいま、蘭。俺は…」
「………………」
「……蘭?」
返事がないことに不安を覚えて彼女をみると、頭を押さえてうずくまっている彼女を見つけた。慌てて駆け寄ると、ふらりと倒れる愛しい人に、俺は為す術もなく抱き止めた。
「蘭………っ!?」
俺の声が届くはずもなく、虚しく霧散した−−。
僕の声は君に届かずに溶けた。
(ただいま)
(君にずっと伝えたかった)
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