後悔を叫ぶ俺に、いったい何ができるだろう。





「これ。使って。いつでもいいから」





 そう言って渡された解毒剤を、俺は手のひらの中で転がした。本当は受け取りたくなかったけど、博士にも頼まれては仕方ない。だが、いつ飲むか考えあぐねていた。
 飲んでもいいのだろうか?俺だけ幸せに?アイツは一人で総て抱え込んだのに。俺のために。
 そんなこと、できるわけない。俺だけなんて…。





「コナン君」

「………え?−−あ、光彦か」





 思わずほっとした息を吐いた。それに気付いたのか気付いてないのか、光彦は俺を席から引き摺って離し、人気がない場所に着いてから問いを発した。





「コナン君は、灰原さんと何があったんですか?」

「何……って、」





 答えることができずに困った表情をしていると、光彦は真剣な表情で俺に言った。





「何を悩んでいるのか僕は知りません。でも、灰原さんなら大丈夫ですよ。僕たちが付いてますから。灰原さんは絶対に僕が−−僕たちが守ります!」

「光彦…」

「だから、コナン君はコナン君のしたいことをすればいい。後ろめたさで後ろを向かないで下さい。コナン君らしくないですよ」

「サンキュー…」





 誇らしげな光彦に、悩みも総て吹っ切れた。そして走り出す俺に、光彦は笑って手を振ってくれた。俺は、何を勘違いしてたのだろう。アイツが独りじゃないことをわかってたはずなのに。
 薬を飲む。それだけを決めて俺は走り出した。






 それは、江戸川コナンがこの世から消えた日−−。




叫ぶ声は遠くで消えた。
(大好きだったよ、オメーらが)
(僕たちもです!)






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