そこにあったのは、孤独な世界だった。
「ここはどこ?」
「オメーの夢の中」
問い掛けたわたしに、写真の中だけの存在のはずの彼が笑ってそう答えた。工藤新一。わたしの幼なじみだった人。
たまにみるこの夢。わたし以外は彼一人だけ。孤独な空間。
どうしてこんな夢を見るのだろう。まるでこれしか知らないみたいに。早く思い出せと言われているかのような切迫感を感じて怖くなる。
あなたは誰?わたしの何?
問い掛けても、彼はただ微笑むだけで何も答えなかった。これは夢だ。だから、また彼とお別れをしなければならなくなる。この白い世界に、わたし一人だけになる。−−そして、彼一人だけに。
「なぁ、蘭。俺は、オメーが忘れたままでもいいんだ。ただ、幸せで居てくれたら…」
「いや!わたしは…知りたい。あなたのこと」
困った表情で頬を掻いた彼は、そんなわたしに呆れもせず、嬉しそうに笑った。
「なら、オメーに魔法をかけてやるよ」
「魔法……?」
「絶対に思い出せる、魔法のお呪い」
「な、に……」
意識が途切れる直前、彼が何か呟いたのが見えた。掠れる意識の中、泣きそうな寂しい笑顔。
初めて知るのが怖いと思った。
わたしの世界には、わたし一人しかいない−−。
孤独な世界
(あなたの寂しげな笑顔を)
(わたしは晴らしてあげられるかな?)
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