†波乱†




健やかな寝息が
穏やかな寝顔が
生きている証
手から伝わる温もりが
温かくて、優しくて
涙が零れ落ちてくるかと思った…



†波乱†



阿笠邸に戻ってから、哀は急いで快斗に輸血をした。
こんな時のために残しておいた献血パックが役に立った。
それでもまだ血が足りなくて、優作が知り合いの病院から血を分けて貰って来た。
さっきまで青い顔をしていた快斗も今では血の気が戻って健やかな寝息をたてている。
そこまで来てふうと息を吐いた哀が笑みを見せた。

「これでもう心配はないわ」
「快斗!!」

哀が横に移動するのと同時に新一が快斗に駆け寄る。
それを黙って見ていた優作と寺井の表情にも安堵が広がっている。
だが、優作は今からまた空気を重くしてしまうのかと自嘲の笑みを浮かべた。

「もう快斗君は大丈夫だろう。問題は君だ、ユダ」

部屋の中が一瞬で暗くなった。
空気が肌を刺すようにピリピリしている。
たがユダはまったく気にすることなく快斗の方をただ見ていた。

「そうだ。快斗の命狙ってた奴なのに」
「何故こんな危険な人いっしょに連れてくる必要があったんですか?」
「落ち着きなさい。新一、哀君。快斗君のあれを見られてしまったんだ。連れてこない訳にはいかないだろう」

敵意剥き出しの新一と哀を宥める優作。
ユダの様子を伺ったが、変わらず快斗を見つめていた。
どうやら完全無視のようだ。
優作はため息を吐いた。







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