†帰る場所†




ごめんね、みんな
もう無理なのかな?
できることなら、まだ生きたい
大切で、愛しい、彼らと共に…



†帰る場所†



波底を漂っているような感覚。
此処は何処だろう?
俺は確か銃で撃たれて…。
ああ、死んだのか?俺…。
ごめんね新一、哀ちゃん。
帰るって、ずっと一緒だよって約束したのにね。
約束守れそうにない。
遠くに何かが見えた。
頭の中に流れ込んでくる映像。
そこでは、俺は王族だったり、ただの平凡な庶民だったりした。
でも、毎回パンドラの瞳の貴重さに、命の危険に晒されて、結局最後には俺が死ぬ夢。
俺は、これでみんなが――新一や哀ちゃん、母さんや父さんが死ななくて、危険な目に遭わなくて済むとうれしかった。
みんなが幸せになってくれるならと…。
だが、時は無情だった。
死んだ俺に縋りついて泣く新一と哀ちゃん。
静かにまるで哀しんでいるかのように静かに涙を流す母さんと、母さんを抱き締めながら拳を握り締めてる父さん。
父さんも涙を流していた。

「どうして泣いてるの?俺が死ねば、みんな危険な目に遭わなくて済むでしょう?」

泣いて欲しくなくて叫んでも、映像は変わらない。
ただ、俺が死んでまた泣いてる姿を見ていることしかできなかった。

「俺が死ねば、安全で平和な暮らしができる筈なのに、なんで泣くの?幸せに暮らせるでしょう?俺さえいなければ…」

死んだ俺には愛しい人の涙を拭うことさえできない。
心配ないよって誰よりも優しい人を安心させてあげることもできない。
母さんと父さんにありがとうって、幸せだったよって伝えることもできない。
強く、強く、思った。

「生きたい。生きて、みんなに会いたい…」

死ぬことが守ることじゃないんだ。
一緒に生きて、戦うことが幸せなこと。
やっとわかった。
死ぬことは、逃げることと一緒だったんだね。
帰りたい、みんなのところへ。
快斗の頬を涙が一筋伝った――。







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