†隠しきれない想い†





まだ気づいてないけれど、
いつバレるかびくびくしてるんだ…
ねぇ、もし気づいても
変わらずに俺のこと受け入れてくれる?



†隠しきれない想い†



あれから暫くしてまたKIDの予告状が届いた。
新一も暗号解読を頼まれてKIDの現場の指示を幾つか出してその場を後にした。
KIDの予告状に記されていた中継地点に向かって。
新一はビルの屋上で隠れてKIDを待った。
少しの間潜んで待っているとKIDがやって来た。宝石を月に翳す姿を見つめる。
新一はあれが探し物を見分ける為の方法なんじゃないかと思ってる。
なんだか侵しがたい神聖な儀式のようで。
KIDが宝石を下ろす瞬間、一瞬だけ辛そうな哀しそうな表情がよぎった気がした。
直ぐに消えてしまったから分からないけれど…。
不意にKIDの冷涼な気配が強くなった。

「今晩は、名探偵。そこにいらっしゃるんでしょう」
「……気づいてたのかよ」
「気配もそうですが、現場が今日は手ごわかったのであなたが関わっているんじゃないかと」
「それにしては余裕で来やがって」

シニカルな笑みを浮かべてKIDが言うのに、新一が不敵な笑みを浮かべて答える。
こうして緊張感のある会話をするのを新一は気に入っていた。
こいつも不思議な奴だよな、と新一は友達――今では親友と呼べるかもしれない少年の姿を浮かべた。
一瞬、白い影がよぎる―――。
そこで新一の意識は現実に戻って来た。

「――名探偵?」
「あ、いや。そういえば怪我大丈夫か?灰原がすげー気にしてて」
「もう大丈夫だとお伝え下さい。ご心配ありがとうございますと」
「今日も来るって聞かなくてな。なんとか宥めて来たんだよ」
実は時計型麻酔銃(改)で無理矢理眠らせて来た。
今頃、目が覚めてる頃かな。
怒られることを予想して新一はちょっと身震いした。

「なぁ、お前――」

ザアッと風が吹き抜けて行った。
KIDが誰も寄せ付けない抜き身の刃のような気配を放つ。
黒の組織との戦いの時でもこんなプレッシャーは感じたことがなかった。
ビクリと体が震えたが、気力で抑え込んだ。

「名探偵。もう私には関わらないで下さいとお願いした筈です」
「約束した覚えはない。それに、俺はお前を捕まえるって決めてんだよ、KID」
「窃盗は管轄外なんじゃないんですか」「お前は別さ。俺はお前の謎を解くって決めたから。できればお前がしてくれたみたいに俺たちが助けてやりたいと思ってる」

そう言う新一にKIDは切ないような嬉しいような気持ちになった。
なぁ、期待させるようなこと言わないで。
俺なんかの為に、危険に飛び込むようなことしないでくれよ…。
その気持ちだけでもう十分だから。
これ以上誤魔化しきれないんだ。
多分、ずっと前から俺はお前のことが…。







[ 6/91 ]
[] []
[list][bkm]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -