†静かなる怒り†




ねえ、どうして父さんが
死ななきゃならなかったの?
父さんは、ただ俺を護ろうとしてくれた
ただそれだけだったのに
何でお前らがのうのうと生きてて
平和を望んだ人が死ななきゃならない…



†静かなる怒り†



幹部たちを盾に取られ、撃つに撃てなくなった部下たちは固唾を呑んで見守った。
その緊迫した空気の中に怪盗の声が静かに響く。

「あなたたちに聞きたいことがあります。何故、黒羽盗一を殺したんですか?」その怪盗の質問に、背後を取られた幹部が声高に笑い出した。

「何故だって?簡単なことだ」
「黒羽盗一が怪盗KIDの正体だったからさ。なぁ?黒羽盗一」
「まだ生きていたようだが今度は逃げられん」
「お前は、此処で死ぬんだ」

それを聞いたKIDは一度目を閉じた。
怒りが身を焦がし、外に食い破って出て来るかと思うほどの憤怒。
赦せなかった。
そんな簡単に命を弄ぶこいつらが。
父さんの命を奪ったこいつらが――。
骨の一片たりとも残らなかった父親の葬儀。
空の骨壺を抱えて気丈に振る舞ってた母。
全部こいつらのせいで…。
赦せない。
殺しても殺し足りないくらい憎かった。

「そうですか。でも、残念ながら私は黒羽盗一ではありません。あなたたちが奪ったすべての命を此処で償って貰います」
「戯けたことを」
「お前に何が出来る?黒羽盗一」

KIDは黙ってトランプ銃を取り出した。
それを構えて幹部たちに向ける。
緊張感が高まった瞬間、KIDは天井目掛けてトランプ銃を撃った。
突き刺さるトランプ。
煙がもうもうと部屋中に広まった。

「奴を、捕まえ…ろ……」

ばたばた倒れていく組織の人間を、KIDはマスク越しに見つめた。

『終わったよ、父さん…』

快斗は心の中で呟いてその場から消えた。
後には倒れた男たちが残った――。







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