†嵐の前の静けさ†




ただ願う
無事に戻って来るように
それが私にできる
唯一のことだから…



†嵐の前の静けさ†



「じゃ、行ってくるな、灰原」
「またね、哀ちゃん」

その軽い調子の言葉に、何度癒されただろう。
何度安心させられただろう。
哀は黙って微笑んだ。
その顔を見て、快斗と新一は顔を見合わせて哀のところまで戻って来た。

「哀ちゃん。別にお別れって訳じゃないんだよ?」
「俺たちは絶対戻って来る。だから、待ってろ」

すべてを、この胸の内の不安を言い当てられたようでびっくりした哀は、灰色の瞳を見開いてそれから苦笑した。
どこまでも優しくて、どこまでも強く、そして脆いこの人たちを守りたいと思った。

「莫迦ね。別に心配なんてしてないわ。だって、世紀の大怪盗と名探偵さんですもんね」
「約束だよ。あのクローバーのストラップに誓って」
「臭い台詞」
「新一だって似たようなものじゃない」

帰って来ないんじゃないかと考えると、不安だった。
でもこのふたりを見ていれば大丈夫。
きっと誰よりも気を張り詰めてるふたりが笑っているのだから。
たとえそれがポーカーフェイスだったとしても信じられる。
一緒には行けないけど、せめて心だけはそばにいさせて。

「ありがとう////」
「「行ってきます!!」」

白い戦闘装束を纏って行く彼に、その彼について行く人にどうか加護を…。
哀は吹っ切れたように笑みを浮かべて優作の許へ。
寺井がそれを見て移動を開始した。
これからが、本番――。







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