†愛しい人†
ずっと一緒にいよう
それはなによりも尊い約束
必ず戻ってくるよと、笑顔で返した
大切な大切な約束…
†愛しい人†「快斗、いいか?」
ひょいっとドアから顔を覗かせる新一に、快斗は笑って部屋へと招き入れた。
くすくす笑う快斗を新一が不思議そうに見ると、快斗が口を開いた。
「さっき優作さんが来たよ。今日は人がたくさん来る日だね」
「父さん来たのか?」
不機嫌な表情になった新一に快斗はキスを贈って、微笑んだ。
快斗の紫暗の瞳は月明かりを受けて赤く輝いている。
それを飽くことなく見ていれば、快斗は苦笑して目を閉じた。
まるで蒼い視線から逃げるように。
「うん。優作さんが父さんの親友で本当に良かった。きっと父さんも救われただろうから…」
「快斗。お前には俺がいるだろ?」
一瞬、驚いたように目をしばしばさせた後、快斗は破顔した。
「うん。そうだね。俺には新一がいる」
「なら、それでいいじゃねぇか」
ぶすくれた顔をして言っても説得力がない。
それでもようやく見えた快斗の瞳に笑みを浮かべて手を伸ばした。
「綺麗だな…」
「綺麗じゃないよ…」
哀しげな顔をする快斗に、新一は微笑んだ。
「綺麗だよ、快斗。命の証だ」
「命の、証…?」
「ああ。だから、絶対戻ってこような。この愛しい日常に…」
「うん、約束」
儚くて切ない色。
新一が綺麗だと言ってくれるから、この瞳もそんなに悪くない。
笑ってキスをして、明日すべてを終わらせよう――。
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