†好きの表し方†




正直に話そう
すべて話せる訳じゃないけど
きっとわかってくれるから
だから、少しだけ聞いてね…



†好きの表し方†



「黒羽君。ちょっといいかしら?」

新一が出て行ってから部屋の掃除をしていた快斗は、哀が来たことに気付いてにこやかに出迎えた。
その時気づいたあることに、一瞬反応が鈍ってしまったが。

「……いらっしゃい、哀ちゃん」
「お邪魔してるわ」
「珈琲淹れてくるからちょっと待ってて」快斗がパタパタとキッチンに駆けていく。
哀はそれをソファに座りながら見送った。

「お待たせ。それで、どうしたの?」
「工藤君のことで話があるの」
「新一のことで?」

きょとんとした快斗はさっき気づいたあれが何故かを唐突に理解して微笑んだ。
その穏やかな表情に、哀は一瞬見とれてはっと我に返った。
工藤君には勿体無いわねとちょっと思いながら。

「黒羽君は工藤君のこと、好き?」
「うん、好きだよ。言葉では表せない程…」
「工藤君とは恋人よね?」
「うん」

快斗が晴れやかな笑みを浮かべた。
それを眩しそうに見詰めて、哀はやっぱり心配ないじゃないと新一に詰め寄りたい気分になった。
でもここからが本番。
きちんと聞かなければ、彼は納得しない。
この表情の黒羽君を独り占めにするのはお駄賃として許してもらいましょ。

「工藤君としないのは何故?」
「……組織との戦いが終わるまで、待って欲しいんだ」

快斗は素直に応えた。
哀はそれに満足感を覚える。
やっぱり黒羽君は黒羽君ね。
強くて、優しくて、脆くて、儚い。

「じゃあ、直球で聞くわ。工藤君としたいと思ったことはある?」
「あるよ。昨日も抑えるのに大変だった。だから、新一。帰っておいで」

優しい声で言った快斗に、哀はすべてがバレていたことにようやく気づいた。
そうだった。
黒羽君が盗聴器の類に気づかない筈がなかったのだ。

「ありがとう。哀ちゃん」
「どういたしまして」

快斗の笑顔が見れた分だけ得したと思おう。
哀は快斗に最高の笑顔を向けた。




「快斗!!」

バタン、ガタンと騒がしい音の後に新一が駆け込んでくる。
新一が快斗に駆け寄って抱きついた。

「ごめん、快斗。ごめん」
「いいよ、新一」

哀はそれを見届けて、そっと席を立った。
快斗が目線でありがとうともう一度言った気がした。
それに気分を良くしながら、哀はその場を離れた。

「好きだよ、新一。待っててくれる?」
「うん、待つよ。待つから…」

好きの気持ちをたっぷり込めたキスをしよう。
少しのずるさも隠して、甘い甘い気持ちを込めて――。







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