†連れてってくれないなら…†




そんなに俺が信じられない?
なんで一緒に連れてってくれない
お前はいつもひとりで決めて
何も教えてくれないことに密かに傷つく…



†連れてってくれないなら…†



『……ど、くん……くど…くん』

遠くから誰かが呼ぶ声がする。
新一はうっすら意識を取り戻して目を開いた。

「工藤君!!黒羽君は!?」

目の前に飛び込んできた哀の姿に驚くと同時に、気を失う前のことを思い出してばっと飛び起きた。

「快斗!?灰原、今何時だ」
「もう11時よ」
「俺、何で…。そうだ。あの時快斗に…」

新一はすべてを思い出して舌打ちする。
快斗は結局俺に何も言ってくれなかった。
ただごめんと謝るだけで…。
快斗の哀しげな表情が浮かび上がる。
最後に見たのが切なげな顔なんて哀しすぎる。
新一は、快斗が連れて行ってくれないなら、自分から行こうと心に決めた。

「快斗、まだ帰って来てないんだよな?」
「ええ。まだよ」

哀と一瞬瞳が交差する。
彼女だけ仲間外れにするのはもう止めだ。
こうなったら、タッグを組むしかないだろう。

「迎えに行くぞ」
「博士が車の準備をしてるわ」
「……用意がいいな。始めから行く気だったってことか」

ふたりしてニヤリと笑いあう。
その時、声が響いた。

「その必要はありませんよ」
「「快斗(黒羽君)!!」」

振り返って見ると、ベランダに降り立ったKIDが翼をしまっているところだった。
新一が起き上がって快斗に掴みかかる。

「工藤君!!」
「なぁ、何で何も言ってくれないんだよ。俺たちは仲間じゃなかったのか?」「新一。それは違うよ」

快斗はKIDの仮面を外して新一に向き直った。
これは、ちゃんと話さなきゃならないことだから…。
蒼と紫暗の瞳がぶつかり合う。
どちらも譲る気はなかった。

「何が違うんだよ」
「新一のことも、勿論哀ちゃんのことも仲間だと思ってる。ただ…」
「ただ?」

不思議そうに新一と哀が視線を交わす。
そうしてもう一度快斗を見た。
強い決意を感じさせる声で快斗が言ったのは…。

「ユダのことは、俺に任せて欲しい」

その言葉に新一と哀は息を呑んだ。
凍りついた空気がその場に流れた――。







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