†偽りの邂逅†





一緒にいることができり毎日が楽しくて
俺の真実に君が気づかないことを
ずっと祈ってる…
どうか、気づかないで…
偽りの中の真実に…



†偽りの邂逅†



KIDの犯行予告日。
新一と哀は杯戸シティーホテルの屋上にいた。
コナンとKIDが初めて会った場所。
なんだか色んな意味で運命的なものを感じる。
2人はKIDが来るのを待っていた。
予告時間を10分くらい過ぎた頃、KIDは静かにその場の空気を壊さないように降り立った。

「こんばんは、名探偵。そして女史もお久しぶりです。良かったですね。無事ご帰還おめでとうございます」
「何言ってんだよ。お前だってあの場にいたくせに。知ってんだぜ。こそこそ手助けしやがって」
「工藤君―――」

哀に睨まれて新一は押し黙った。
それに満足して、構えていた時計型麻酔銃(改良版※三連射可能)を下ろして哀はKIDに向き直った。

「怪盗さん。あの時は助けてくれてありがとう。感謝してるわ」
「どういたしまして。お嬢さんのような可憐な少女が困っていたら助けるのは当たり前です。ですからお礼は無用です」
「よく言うぜ。そんな歯が浮くようなセリフ今時……すみませんでした。ありがとうございました」

再び哀が時計型麻酔銃(改)を向けると、新一はKIDに凄い勢いで頭を下げた。
それにKIDはくすくす笑いながらそんなに気にしなくていいのにと思った。
KIDには、新一の優しさが分かっているから。
不器用だけど感謝の気持ちは伝わって来たから。

「いいんですよ。本当に。私は私のしたいことをしただけなんです。だから気にしないで下さい」
「でも私は嬉しかったから。本当にありがとう」「……サンキュ」

2人の優しさにKIDの胸が熱くなった瞬間、殺気を感じた。
殺気の向かう先には哀がいた。
叫ぶより前に体が動いた。

「危ない―――!!」
「ぇっ?」

疑問の声を上げたのは新一か哀か。
とにかくKIDは哀を体ごと包み込んでいた。
次いで響くサイレンサー付きの銃声。
弾はKIDの左腕を掠った。
左腕からは血が流れ出して白い衣装に赤が栄えて新一も哀も固まった。
固まっている2人を引っ張って物陰に隠れる。
様子を窺った限りでは狙撃手はどうやらいなくなったらしい。
ホッと息を吐いてKIDは腕の傷を止血した。
そこで漸く茫然自失から戻ってきた新一と哀がKIDに駆け寄って来た。

「KID!!おい、大丈夫か!?」
「ご、ごめんなさい。傷見せて」

真っ青な哀の顔色に内心苦笑しながらKIDはポーカーフェイスでゆっくりとビルの淵へ歩いて行った。

「気にしないで下さい。あれは私を狙ったものです。あなたたちに当たっていれば私が後悔したでしょう」
「でも……」
「私はこれにて失礼させて頂きます。これからは私には関わらないことをお勧めします」
「待て、KID!!」

怪我を感じさせない動きでKIDはその場を後にした。それぞれの心に歪みを残して…。



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