†不誠実な約束†




中の様子も解らず
不安だけが大きくなった
約束しただろ
戻って来るって…



†不誠実な約束†



建物ががらがらと崩れていくのを新一たちはただ見ていることしかできなかった。
全員が絶望的な気持ちになっていた。

「快斗……快斗ッ!!」
「工藤君」

まるで新一の心の慟哭のようで哀は悲痛な表情で呼びかける。
もう半ば諦めかけたその時、燃え盛る建物から出てくる人影があった。
炎に栄える銀色の髪に緑色の冷たい眸。
一瞬身構えた新一たちは、彼の腕の中にいる快斗に気づいて驚いた。
純白の衣装を血で染めた姿。
悪い予感にぞっとした。

「――――快斗ッ!!」
「黒羽君……」

悲痛な声を上げるふたりに一瞥をくれて、細身の長身の男は言った。

「お前らがこいつの仲間か…」
「お前、ユダか!?」

どこかで見たことがあるような眸だと思っていたら。
新一は警戒心も露わにユダに噛みついた。

「快斗から離れろ!!」
「黙れ。お前など簡単に俺は殺せるんだ。それにこいつは離してやる」

鋭い殺気に新一は身を竦めて、哀は震え上がった。
怖い。
危険だ。
早くここから離れたい。
心が、本能が叫ぶ。
震えて自分の体を抱き締める哀を庇って優作と寺井が前に出る。
息子たちでは相手にもならないだろう。
内心優作も冷や汗をかいていた。

「それでは、快斗君を渡してくれるのかな?」
「………ああ」

ユダは目の前の地面に快斗を下ろす。
ユダが一瞬、目を細めて快斗を見つめた。
そして一歩離れる。

「快斗!!」
「黒羽君!!」

殺気の呪縛から解放されたふたりは真っ直ぐに快斗に駆け寄った。
死んでいるんじゃないかと思えるくらい快斗の顔色が悪かったから。
ユダが嘲るように言う。

「まだ死んでねえよ。簡単に死なれたらつまらないからな。それにしても、お前らこいつに信用されてないんだな」
「なんだと」

怒りに燃える新一に何かが投げつけられる。
拾って見てみたら、それは小型の爆弾だった。
警戒して慌てて離す。
そしてユダの一言に皆が凍りついた。

「それ、そいつが持ってたんだぜ」
「………ぇっ……?」

新一は快斗を茫然と見た。
頭の中が、一瞬にして真っ白になった。
哀は口を手で覆っていて、優作と寺井は驚いたように快斗を見た。
ユダは新一の蒼い瞳が絶望に染まっていくのを愉快そうに見て、そのまま踵を返した。

「…………快斗?」

なんだか、裏切られたような気持ちになった。
ただ、哀しくて辛くて信じられなくて…。
離れて行ったユダが、ぽつりと確かめるように快斗の名を口にしたのを誰も気づかなかった。







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