†決意の果て†




ごめんね…
約束守れそうにない
心配してくれてたのに
みんな、ありがとう…



†決意の果て†



快斗は一度目を閉じてから瞳を開いた。
ガラガラと崩れていく壁の隙間から、月の光が差し込み、快斗の瞳を赤く光らせる。
その幻想的な光景に一瞬目を奪われたユダは、快斗が話し出したのにはっとした。

「そうですね。確かにこれは隠しきらなければならない秘密です。でも、人よりも大切だとは思いません」
「私怨のためにKIDをしてるのだろう?なら、人を殺すことだって…」
「私は人を殺しません」

快斗の強い瞳にユダは一瞬気圧された。
快斗はゆっくりと目を閉じてまた開いた。

「私は父を殺された。だから、そいつらと同じ人殺しにだけはならない」
「詭弁だな。なら、どうする?お前の秘密を知ってる俺を…。俺はお前のことを組織の連中に売ってもいい」

ユダが快斗の意志を砕こうと言葉を重ねる。
それに快斗は、儚げな慈しむような微笑みを浮かべた。

「あなたはしませんよ。だってあなたには、大切な人がいるでしょう?」

解るから。
さっき俺を見た時の眸が大切なものがあるって、語ってたから。
たとえそれが、過去の話でも――。
だから、大丈夫だと信じたい。
そんな願いも虚しくユダは言った。

「黙れ!!俺には大切なものなんてない!!俺は、お前のことを殺すこともできるんだぞ。そうだ、お前の大切な奴らも殺してやろうか!?」
「やめて下さい。もし、本気なら…」
「本気ならなんだ」
「――あなたを殺します」

ユダは自分の希望通りになって暗い喜びを感じた。
だが、快斗の言葉には続きがあった…。

「あなたを殺して、私も死にます」

慈しむような笑みで言われた言葉に、ユダは驚いた。
復讐をどんなに願っていても、人を殺していいとはどうしても思えなかった。
俺たちが組織と対決したせいで死んでしまった命を背負う覚悟はある。
でも、もし自分のために人を殺すなら…。
快斗の言葉はまだ続く。

「人を殺したその手で生きていることなんてできません。血に染まった穢れた手なら、私は共に堕ちることを選ぶ。だから、私も共に…」

快斗は懐から大切に仕舞っていた小型の爆弾を取り出す。
それをなんとか動く腕でユダに投げ渡した。
快斗の手には起爆スイッチ。
ユダはその行動に驚いて固まっている。

「これですべてが終わります。あなたも、私の命も。あなたを殺すほどの力は残っていないのでこれで失礼します」

なんでもこの爆弾一つで半径3キロが跡形もなく消えるらしい。
小型の素晴らしい性能の爆弾だった。
よくこれだけのものを作れたものだ。
ユダは関心した。

「あなたひとりで逝かせはしません。私も一緒に…」

流石のユダでも、この爆弾からは逃げられない。
そして俺も…。
だから、さようなら。
一緒に過ごせて楽しかったよ、新一。哀ちゃん。
できることなら、ずっとそばにいたかった…。
ありがとう…。
起爆スイッチを押したところで快斗の意識はブラックアウトした。







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