†変わったもの変わらないもの†





あの辛かった日々に
俺たちを助けてくれたあいつには
すごく感謝してるんだ
お前の目的は今でも分からないけど、
探し物が早く見つかることを祈ってる…



†変わったもの変わらないもの†



KIDの犯行予告が来た。
新一は、一課でその話を聞いた。
実は黒の組織との戦いの時に影ながら助けてくれたKIDにはいつか礼がしたいと思ってた。
その話を隣の阿笠博士の家ですると、哀が自分も行きたいと言って来た。
哀は元の姿に戻らずに灰原哀として新しい人生を歩むことを決めた。
ずっと組織のことで苦しんでた哀には幸せになって欲しいと誰もが思ってたからこれで良かったんだろう。
今では、少年探偵団の保護者的存在になっている。
歩美とは姉妹みたいな温かい関係を築いていて、いつか罪の意識に囚われずに幸せになってくれるだろう。
今はまだ罪の意識に苛まれてあまり我が儘や願い事をしたりしない。
その哀が、初めて頼んだのがKIDに会うことだった。

「一緒に行くってお前が?」
「あら?私以外に誰が行くの?」

くすりと哀が皮肉気に笑う。
それに新一は渋い恐々とした表情をした。

「でも、灰原…」
「――工藤君。私もあの人にはお礼を言いたいの」

緊張した空気が流れる。
暫く無言で見つめ合い、折れたのは新一だった。

「分かったよ。灰原」
「ありがとう。工藤君」
「ただし、俺と一緒だからな」
「分かってるわ」

和やかな空気が流れ出した頃、それを破るチャイムが鳴った。
ガチャリとドアが開く音がする。
誰だよこんな時にと思っていると、声が聞こえた。

「こんにちは〜。哀ちゃん、博士〜。工藤いる〜」「黒羽君が来たみたいね」
「やべっ。約束忘れてた」
「あなたね…」
「仕方ないだろ!!KIDのことで頭が一杯だったんだよ」

呆れた顔をする哀に、新一は顔を赤くして言い訳する。
そこへ阿笠博士に連れられた快斗がやって来た。

「こんにちは、哀ちゃん。工藤もひでーよ。家行ったら居ないんだもん」
「こんにちは、黒羽君」
「悪かったよ。黒羽」

2人は以前顔合わせしてからなんやかんやで仲良くなっていた。
人見知りする哀にしてはすぐに打ち解けた。
快斗は周りの空気を明るくするような、人を引き寄せる魅力みたいなものがある。
だから哀も気を許したのだろう。

「それで何話してたの?」
「ああ、KIDのことだよ。予告出たって。そういえば黒羽KIDのファンだっけ」
「…うん、そうだよ」
「悪いな。今回はちょっとな…」
「そう。事件だもんね。仕方ないよ」

この時の俺は気づかなかった。
KIDの話をした時、快斗が辛そうな哀しそうな顔をしたことに…。







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