†湖の辺†





幸せになって欲しい
それが私の、
今はいないあの人の
ただひとつの願い…



†湖の辺†



快斗は夜中にこっそり抜け出して、森の外れの湖に来ていた。
静かな空間に、木々のざわめきや風が水面を揺らす音が響く。
快斗は、その静寂に心を癒された。
ずっと考えてた。
ユダのことを…。
いつか自分を殺しに来ると言った。
だから、あいつは来る。
絶対に――。
快斗はこっそり苦笑して、後ろに呼びかけた。

「優作さん。そんなところにいないでこっちに来たらどうです?」
「やっぱり気づいてたね、快斗君」

優作が影から出て来て快斗のところまでやって来た。

「隣いいかい?」
「ええ、どうぞ」

快斗はにっこり笑って少し場所をずれた。
それにありがとうと言って優作は腰を下ろした。
静寂が辺りを包む。
聞こえるのは、木々のざわめきと風で水面が揺れる音。
水面に映った月がゆらゆら揺れるのを快斗と優作は見詰めた。
先に口を開いたのは優作だった。

「快斗君。本当に隠し事はないかい?」
「はい。ありませんよ」

そう答えた快斗の笑顔に優作はやるせない思いを抱いた。
重く、苦しいものを背負わせてしまった。
私も、盗一も、ただ彼の幸せを祈っていただけなのに…。
これから先、修羅の道を歩むことになる彼にどうか幸あらんことを…。

「そうか…」
「月が綺麗ですね」
「ああ。とても」

突き通さなければならない大きな嘘。
どうか、無事に作戦が終わることを祈った。







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