†不安な心†
本当は俺は、
強くなんてないんだ
いつ離れて行ってしまうか
不安で怖くて仕方ない…
†不安な心†伊豆、工藤家別荘。
新緑の間から降り注ぐ太陽の光が眩しい今日、快斗たちは避暑に来ていた。
「綺麗なところだね、新一」
「ああ…」
無理矢理連れて来られて乗り気じゃなかった新一も、豊かな森林に囲まれて満更でもなさそうだ。
快斗はうれしそうに読書をしている新一を森林浴に誘った。
「ねぇ、ちょっと出て見ない?」
「外にか?」
「うん。楽しそうだし、いいでしょ?」
快斗が笑顔で誘うのに、新一は一瞬目を奪われ手を伸ばしていた。
日の光を浴びて立つ快斗がまるで天使のようで、何処かに消えてしまいそうで不安になったのだ。
いや、違う。
いつも不安なんだ。
快斗は自由な鳥だから、いつ遠くに行ってしまっても不思議じゃない。
だから、捕まえておきたい。
もう、離れることなんて考えることもできないんだ。
きっと、離れ離れになってしまったら狂ってしまう。
「新一?」
「……………」
快斗は訳も分からずに、取り敢えず抱きついてきた新一を抱き締め返す。
いつからこんなに弱くなったんだろう。
でも変わりに手に入れたものもある。
新一は、快斗から離れて笑った。
「行こうぜ。快斗」
「?うん。新一」
手を繋いで歩き出した快斗と新一を、哀と博士と工藤夫妻が微笑ましげに見ていた。
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