†帰還†





帰って来れた
この、居心地の良い空間に
後何度繰り返すのだろう
今度もまた、帰って来れるだろうか…



†帰還†



「黒羽君!!工藤君!!」

哀は、帰ってきたふたりにほっと息を吐いて、ふたりの酷い格好に眉を顰めた。
よく見れば、新一は血だらけだ。
やきもきしていた哀は詰め寄った。

「工藤君。どうしたのよ。その怪我…」
「いや、俺は治ってるからいいんだ」

哀が駆け寄って新一の服を剥ぐのに、新一は大人しくされるがままになっている。
脱がせた新一には、傷ひとつ残っていなかった。
夥しい量の血を吸っている服に最悪の事態も予測していた哀は唖然とした。

「…………傷が、消えてる…」
「色々あったんだよ、哀ちゃん」
「黒羽君?どうしたの」

新一が快斗に変わって説明した。
今日潜入したサスナ製薬会社で爆発事故が起こったこと。
そこで、何者かが暗躍して研究所の人々を殺していったこと。
そして、新一自身が爆発に巻き込まれて死にかけたこと。
快斗の涙の治癒能力でなんとか一命を取り留めたこと。
哀は、その話を茫然と聞いていた。
余りにも非現実的過ぎたのだ。

「これで全部だ。そうだろ?快斗」
「うん。これが盗ってきたデータ」

快斗はユダに遭ったことを話さなかった。
これ以上心配かけたくなかったから…。
だから、盗ってきたデータを見せることで誤魔化した。

「これで計画が進められるな」
「ええ、…………黒羽君?首、どうしたの」
「……ぇっ…?」

新一と哀の視線が快斗の首元の傷に集中した。
鋭利な刃物で切られたような跡。
哀は慌てて治療の準備を始めた。
他にも、指先や手にもたくさんの傷があるのを見て眉を顰める。
兎に角、手当てが先だ。

「それにしても、誰にも見られなかったなんて運が良かったわね」
「ああ、狙撃も止んでたし、多分誰も見てねえよ」

なぁ、と話をふられた快斗も頷いた。
これは、自分が蒔いた種だから自分でなんとかしなきゃ。
快斗がそんな風に決意を固めていることに、誰も気づけなかった。







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