†復讐の劫火†





この気持ちは
ただ綺麗なだけじゃない
胸の奥に深く
静かに眠っているんだ…



†復讐の劫火†



ナイフで切りつけられるのをなんとかギリギリ回避しながら快斗は焦っていた。
このままでは、やられてしまう。
ナイフが浅く頬を切った。
破れた変装用の合成皮膚を見てユダが目を細めて間合いを詰めてきた。
壁に肩を乱暴に縫いつけられて快斗は息を詰める。
ユダの手が豪快に皮膚を剥がしていった。

「ほぅ…。こんなところで逢えるとはな。なぁ?怪盗KID」
「私もまさかこんなところで遭うとは思ってませんでしたよ、ユダ」

顔が触れるほど近くにあるユダの顔を快斗は睨み付ける。
それにユダは、愉快気な表情を浮かべた。

「今日は別の仕事があってな」
「何故、私だと気づいたのですか?」
「初めからお前だとは気づいていなかった。ただ、気配が薄かったのと後は動きだな」

ユダは面白そうに解説しながらナイフを快斗の首元に持っていった。
それにも快斗は顔色を変えず、ユダを見続けた。

「そういえば、まだKIDをしている理由を聞いてなかったな」
「聞いてどうするんですか?」
「それは聞いてから決める」

快斗は逃げるのを諦めて仕方なく話に乗ってやることにした。
どの道今は逃げられない。
それでも、ユダを睨み付ける瞳の強さは変わらず、ますます深い紫暗になった。
その変化を目を細めてユダは見ていた。

「………………ただの私怨ですよ」
「なんだと」
「ただの私怨だと言ったんです。父親を殺された子供のただの復讐劇」

そういう快斗の紫暗の双眸の深さにユダは惹きつけられた。
そうだ。
俺は父さんの意志を継いだ。
父さんを殺した奴らに復讐する為に。
父さんの跡を継ぐことを名目とした、ただの復讐劇。
その事実を突きつけられた気がした。
突きつけられたままのナイフが皮膚に食い込んで血が滲み出す。
白い首筋に赤が映えた。
ユダはナイフをどけて、惹きつけられたように切れた首筋に舌を這わす。
びくりと震えた快斗にユダが口を開いた――。
その時、爆発音が響いて地面が揺れた。

「…………なっ……!?」
「……時間か」

残念そうにユダが快斗から離れた。
何かが始まる前兆だった。







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