†逃亡の果て†





もう大丈夫かな?
心配かけてる自覚はあるから
できるだけ無茶はしないようにするんだ
でも、そんな努力は無意味なのかもね…



†逃亡の果て†



雨がしとしと降る6月。
いつものように学校に来た快斗は、校門のところに白馬と服部がいるのを発見した。
そう、実に1ヶ月ぶりに。

「黒羽君!!」
「黒羽ぁ〜〜〜〜っっ!!工藤は何処や!!」

今日は残念なことに新一は事件の呼び出しでいなかった。
だからひとりで来たのだが(新一と哀は心配だからと止めたのだが快斗が強行突破で出て来た)、どうやらそれが仇になったらしい。

「新一なら事件の要請でいないよ」
「黒羽君、それなら僕と一緒に講義を受けませんか。食事もご一緒に…」
「いや」
「そんなこと言わないで下さい。黒羽君は照れ屋なんですから」
「嘘吐くんやあらへん。工藤何処にやったんや!!」
「はぁ?――だから事件だって…っ……」

一刀両断する快斗の反応を自分の都合のいい方に勝手に捉える白馬に、なんなんだコイツと全く分かってないし伝わってない快斗。
白馬の気持ちを快斗が理解することは多分一生ないだろう。
そして悪いことに、白馬たちを止めようとしていた学友たちは白馬の部下に抑えられていて動けなかった。
あっという間に快斗に詰め寄った二人は、快斗の肩を片方ずつガッチリと掴んだ。
勢いで傘が弾き跳ばされる――。
特に左肩を凄い勢いで力強く掴む服部には正直辟易した。
というか物凄く痛い。
雨で怪我が痛む上に圧迫されては堪らない。(折角マジック業も休業して治すのに専念してるのに台無しだ)
それでも表面上はポーカーフェイスでやり過ごす快斗。
その時、ざわざわと周りがざわついて、次いで唐突に痛みが止んだ。
呆然としていると、目の前を飛んでいく鳥と馬。
特に服部は凄まじい勢いで飛んで行った。

「快斗!!平気か!?」
「ぇっ……?新一、なんで……」

白馬と服部を蹴り飛ばして快斗から引き剥がしたのは新一だった。
事件現場に行ったら哀から電話がかかって来て、馬鹿二人が逃げ出したと言うではないか。
慌てて学校に行ってもらったら(有無を言わさずに送らせた)、なんと白馬と服部が快斗に詰め寄ってあろうことか肩を掴んでいるではないか。
それを見た瞬間、怒りに目の前が真っ赤になった。
折角順調に治って来てたのに…、あの馬鹿たちのせいでまた怪我が悪化して最悪マジックができなくなったりしたら…。
完全犯罪で抹殺してやる。

「よかった。取り敢えず平気みてーだな」
「大丈夫だよ。ありがとう。心配してくれて」

まだ痛むだろうに、それでも平気だと笑う快斗に少し哀しくなった。
一通り触って確認し終わってから、新一は快斗を抱き締めた。
肩に負担がいかないように優しくそっと。

「………痛い時くらい痛いって言えよ」
「新一?」
「もっと、俺のこと――俺たちのこと頼ってくれよ」
「ありがとう、新一」

自分の気持ちを吐露した新一に、快斗は優しくふわりと笑って抱き締め返した。
周りも状況も全く気にならなかった。(因みに学友たちは、抱き締めあっている快斗と新一を見て小さな悲鳴と共に噂話に華を咲かせていた)
小雨に降られながら、暫く抱き締めあった後、快斗のことを学友たちに任せて新一は名残惜しそうに迎えに来た高木刑事と一緒に事件に向かって行った。
飛ばされた馬鹿たちは白馬の部下に回収されたとか。







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