†対峙†





何となくだけど
予感はあったんだ…
もしかしたら、
また出逢うんじゃないかって…



†対峙†



ユダと鉢合わせした一件以来初めてのKIDの予告日が来た。
心配する新一と哀の言葉を押し切ってやって来た快斗は、無事に宝石を盗み出し中継地点のビルの屋上へ降り立った。
いや、降り立とうとしたと言った方がいいだろう。
辺りに人がいないか細心の注意を払ったつもりだった。
しかし、KIDが降り立ったところを狙ったかのように着地した足に銃弾が掠めた。
ぐらりと足が揺らぎ後ろに倒れてビルの上から落ちかけたのを、KIDはなんとか堪えて身を捩って前に倒れこむ。

「なっ……」
「よう、KID。やっとお出ましか…」

陰からユダが出て来た。
今日も全身黒尽くめだったが、前回と違ってニット帽は被っていなかった。
月の光を反射して輝く銀髪とアイスグリーンの瞳。
モデル並みに整った容姿をし、癖のないストレートな短髪に細身だが程よく筋肉のついた長身の男。
誰にも知られていないというユダの素顔。
それをKIDはゆっくりと起き上がりながら見つめた。
起き上がったKIDの完治したばかりの左肩をユダが銃で撃つ。
痛みに苦鳴が漏れるのを必死に堪えた。

「……ッ……」
「何故、お前は怪盗KIDなんてやっているんだ?」
「……貴方には関係ないでしょう、ユダ。それよりも、何故私を狙うのですか?」
「日本にKIDという面白い怪盗がいると聞いてな…。数々の暗殺者を返り討ちにしていると聞いてどんな奴か見に来たんだ」

コツコツとユダがKIDに近づいて来る。
それをKIDは黙って見つめていた。冗談じゃない。
ただの興味で命を狙われてたら命がいくつあっても足りない。
KIDが肩に当てた手は血に染まって、白かった手袋が真っ赤になっていた。
悔しかった。
ユダは全く本気で来ていない。
それなのに、やられてばかりな自分が…。
スーツにも血が滲み腕からぽたりと血が滴る。

「貴方もそんなに暇ではないでしょう?私などに構わず他の仕事をすればいい」
「残念だがそれは無理だな。俺はお前が気に入った。だから――」

グイッと顔をユダの方に引っ張られる。
肩を乱暴に掴まれて、KIDの秀麗な顔が痛みに歪む。
露わになった瞳は紫暗色で、月の光を受けても赤い光を放たなかった。
一瞬目を細めるユダ。
シルクハットがころころと転がっていった。

「――お前を殺してやるよ。怪盗KID」
「遠慮しますと申し上げた筈ですが」
「そう言うな」

そうしてユダは、KIDの傷口に唇を寄せた。
ぴちゃりと濡れた音がする。
傷口を広げられる感覚にKIDの顔が歪む。
顔を上げたユダがKIDの唇を塞いで、強引に口を割って舌を絡めてくる。
血の味が口の中に広がった。
KIDがユダの唇を思い切り噛むと、ユダが唇を離した。
ユダとKIDの唇の端が切れていた。

「やるな…。でも、まだ甘い」
「……はぁっ……」

ユダはKIDの口に指を差し込んでもう一回深く口付けてきた。
乱暴で濃厚な口付けに酸素が足りずクラクラする。
最後に、ペロリとKIDの唇の端を舐めるユダを、KIDが睨みつけた。
二人の距離が離れる――。

「またな、KID。今度は何で怪盗なんかやってるのか教えて貰おうか」

一方的な言葉を残して、ユダは去って行った。
傷だらけのKIDを残して…。







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